何もかもウソと芝居よ

お呼びですか

ヴォーグレルさんに会った?

まだです

看護してもらう前に事情を説明しておくわ 彼女は女優で「エレクトラ」に出演中だった 舞台の途中で突然口をつぐんでしばらく黙ったまま 本人の言い訳は“笑いそうになったから” 翌日劇場での練習に現れなかった 家政婦が部屋に行くとベッドの中で問いにも答えず身動きもしない 3ヶ月間そのままであらゆる検査も受けた 精神的にも肉体的にも全く問題はなかった ヒステリー発作でもない 何か質問は? なければ患者の病室へ

こんにちは 今日からお世話をするアルマです 自己紹介しますね 25歳 婚約中です 2年前看護婦の資格を 実家は農場です 母も昔は看護婦でした 夕食はレバーとサラダ おいしそうですよ 頭を高くしなくていい?

アルマ 患者の印象は?

妙な感じです 穏やかな顔つきなのに目だけは違った 射ぬくような それで…

何なの?

看護の自信がありません

怖いの?

もっと年長で経験豊富な看護婦のほうがよいかと 私では未熟すぎます

どこが?

心が

心が?

彼女の症状が病気でないとすれば意図的です

それで?

並外れて強い意志です 私には対処できません


いやだ なぜこんなに胸騒ぎがするの? 不安なの? カール・ヘンリックと結婚して子供を作る 悩む必要などない 決めたことよ 幸せよ 仕事もやりがいがある 幸せなのよ 喜ばなきゃ そう 私は幸せなの 彼女に何があったの? エリーサベット・ヴォーグレル エリーサベット


開封してあげるわ どうする? 読みましょうか “愛するエリーサベット 会えないので手紙にする 迷惑なら破り捨ててくれ どうしても書かずにはいられない どうしても知りたい 知らず知らずのうちに君を傷つけたのか 夫婦の間に誤解があったのか” 続けていい? “私は夫婦仲も円満だと思っていたし幸福だった 君は以前結婚の意味が分かったと言っていたね 夫婦と…” 読めないわ “夫婦というものは2人の臆病な子供が寄り添うのに似ていると 心は善意と優しさに満ちている だが… だが見えない力に操られていると 君はそう言った 森を散歩していた時に私を引き止めて…” 写真が入ってるわ 息子さんの写真みたい 見たい? かわいい子ね


これ以上病院にいても無意味だと思うの むしろ害になる アルマと一緒に私の別荘で療養しなさい 気持ちは分かるわ 本当の自分でありたいと思っているのね いつも自意識に縛られている 他人の目に映る自分との大きなギャップ “さらけ出したい”という激しい欲望 裸にされ切り裂かれ無になってしまいたい 何を言ってもウソになりあらゆる仕草が演技 自殺する? それは誇りが許さない でも身動きせず沈黙すればウソをつかずに済む 自分を外界から守れる もう心にもない演技をしなくてもいい 違う? でも現実は非情よ 割り込んでくる現実を完全には遮断できない 無視できない 誰もあなたの真の姿など気にかけてくれない 安心できるのは演技している時だけ だからこそわざと口をつぐんだのね 自分の弱さを逆手に取った 尊敬するわ 気が済むまで芝居を続けなさい いずれ飽きればやめるはず 今までもいろんな役に飽きたように


手を比べるのは不吉だわ 私の本を読んであげましょうか 邪魔なら言ってね “人間の持つ不安 かなわなかった夢や残酷さ 死への恐怖 耐えがたい現世の苦悩が来世の救済という希望を打ち砕く 闇と沈黙を前にして信仰は揺らぎ神に見捨てられたと感じる 震えながらそう悟る” どう思う? 私は反対よ 私は今のままで満足なの 反省はしてる よくカールに叱られたわ “君は野心がなさすぎる”と でも試験では優等よ 関係ないわね よく思い出すことがあるの 年老いた元看護婦の施設のことよ 一生看護婦の制服を着て働き通した人たちよ 何かに人生を捧げるってすばらしいわ 信じるものがあるんだもの きっと生きがいを感じられる 何の疑いも持たずひとつの道を進む そういう生き方っていいと思わない? 私もそんなふうに生きたい どしゃ降りね


奥さんがいると知ってて5年つきあったけど彼が逃げたの 彼を心から愛してたけど長い拷問のようだった 幸せな時もあったけど… 彼はヘビースモーカーでいつも吸ってたわ 今にして思うと三文小説みたい 本物の愛じゃなかった 何て言うか偽物の私だった 苦しみは本物よ 苦しみがすべてだったと言えるかも つらかった 言葉までもが いつも人の話を聞かされる役だったの 耳を傾けてくれる人は誰もいなかった あなたが初めてよ こんな話より読書をしたいでしょ 話し続けても怒らない? いい気分 こんなに満たされた気分は初めてよ お姉さんみたい 兄ばかり7人もいて私は末っ子 男に囲まれて育ったの 男は好きよ 女優さんなら分かるでしょ カール・ヘンリックのことは心から愛してるわ 看護婦をしていると誘惑も多いけどね 彼と海辺に滞在した 6月に2人きりで 彼が町に出かけたので1人で海へ いい天気だった 友達が来ていたの カテリーナという女の子よ 一緒に日光浴をしたわ すっ裸で浜辺に横たわった 眠ったりオイルを塗ったり 2人の頭には安物の麦わら帽子 青いリボン付きよ 帽子のつばの下から青い海とまぶしい太陽をじっと見つめていた 突然岩の上に2つの人影が見えた こっちをのぞいてた “男の子が見てる”とカテリーナに言うと彼女は“見せてやりましょう”と ドキドキしたわ 逃げたいのをこらえてじっとしていた 裸で腹ばいになったまま身動きもしなかった カテリーナの胸と肉づきのいい脚が見えた 彼女はクスクス笑った 男の子たちは近くに来て私たちを眺めたわ まだほんの子供よ やがて度胸のある1人がカテリーナの隣にしゃがみこんだ 自分のつま先をいじるフリをしてた どぎまぎしているとカテリーナが言った “こっちへいらっしゃいよ” そして少年の服を脱がせ彼が体に覆いかぶさると腰をつかみ挿入させた もう1人はただ見てるだけ カテリーナの笑い声がした 少年の顔を見ると真っ赤になってた だから私言ったわ “こっちにも来て”と 彼はカテリーナから離れると私のほうに来てどさりと体を乗せて痛いほど乳房をつかんだ 私はあっという間にイッたわ “外で出して”と言う暇もなかった 彼が射精した時精子を植え付けられたと全身で実感したわ 彼と一緒に何度も絶頂に達した カテリーナが後ろから彼を抱いた 彼の指先を使って激しいオルガスムに達しあられもなく絶叫した そして3人で笑った もう1人の子はピーターという名よ 放心したように見てた カテリーナがズボンを脱がせ口を使って射精させた 彼がのしかかると両手で顔を挟んで乳首を吸わせた もう1人と私も興奮してまた絶頂に 泳いでから別荘に戻るとカールが帰っていた 一緒に食事をしてワインを飲み愛し合った あんな興奮はあの時だけよ 分かる? そして私は妊娠 カールの友人の医者が堕胎手術をしたわ 子供は欲しくなかったの でも今は… 分からない 今でも分からない あの時の私は何だったのかしら 普段の自分の理性がどこかに消えてしまう 私に中に2つの人格があるのかしら いやだわ バカみたい 今さら泣き言なんて… 鼻をかませて もう朝ね まだ雨が降ってる 1人でしゃべり続けてごめんなさい 私の身の上話なんて退屈でしょ うらやましい この間あなたの映画を見たあとで鏡の中の自分を見て“似てる”と思ったの 美しさではかなわないけどもっと頑張ればあなたになれるかも 内面の話よ 私になるのは簡単ね 入れ物が小さすぎてあふれるかしら

テーブルで寝ると体によくないわよ

このままだとテーブルで寝ちゃいそう 体に悪いわ おやすみ


エリーサベット ゆうべ話しかけた? 寝室に来た?


投かんしてくるわ ちょうだい じゃあね

“こんな静かな生活を送るのが夢だった 傷ついた心が息を吹き返すみたい アルマはとても献身的よ とはいえ彼女も楽しんでいるみたい どうやら私を崇拝してるようなの 観察するのは面白いわ 過去を嘆くこともある 見知らぬ少年との乱交や堕胎の話 自分は理想と行動が裏腹だと”


戯曲の本? 回復の兆しね そろそろ町に戻りたいわ あなたは? お願いがあるの どうしても頼みたいの 簡単なことよ 話してちょうだい 話題は何でもいいわ 今夜の夕食のこととか今日の海は泳ぐには冷たすぎるとか 少しでいい 本の朗読でもいいから話してちょうだい いやなのは分かるけどあなたの声を聞きたいの ひと言だけでも構わない 拒むのね 冷たい人だわ 芸術家の心は温かいものだと信じてた 人を助けるために創造するのだと バカだった 私を利用して用済みになれば捨てるのね さぞいい気味でしょう 私の言葉も何もかも自分のために利用した ひどい人 陰で笑ってたのね 先生への手紙よ 封が開いていたから読んだわ 秘密をしゃべらせて喜んでたのね 観察して楽しんでたのね 弁解できるものなら言ってごらんなさい

やめて!

おびえたわね 一瞬だけ本心から恐れた “アルマが変になった 殺されてしまう”と あなたは何者なの この期に及んでも観察する気? 私を怒らせて反応を見ているわけ? おかしい? 私にとっては笑い事じゃないわ それでもおかしい? どうしてなの ウソをつかず真実だけ語ることが大切? 本心なんか口に出さずウソをつくほうが簡単だわ 深く考えずに生きるほうがずっと楽でしょ あなたも怠惰になるべきよ 無理よね あなたにはできない相談よ あなたの心はひどく病んでいる 健康である演技をしているだけ 本性はお見通しよ 私ったら… エリーザベット ごめんなさい どうかしてたわ 許して 手紙を読んでしまってショックだったのよ つい打ち明け話をしてしまったから 酔っていい気分で思わず話してしまった 有名な女優に聞いてもらえてうれしかった あなたのためにもいいのではと思って ひとりよがりの思い込みだったわ お願い どうか許して あなたに嫌われたくない ケンカしたまま別れたくないの どうしても許す気になれないの? 自分のほうが偉いから? 分かったわ もういい


だらしない寝顔だわ みっともない口元 額には醜いシワ 涙の香りがする 首に傷があるわね 普段は化粧で隠すの?

エリーサベット

ご主人よ 何の用かしら 私たちの邪魔をしに?

エリーサベット 驚かせたね エリーサベット

違います

逃げないで 会いに来る気はなかった 話は先生から聞いた だが息子がどうしても君に会いたいと 私には理解できないんだ “愛してる”と言うことは別に悪いことじゃない

奥さんではありません

人から愛され心の絆ができれば不安が慰められ心の支えになる いろいろ考えたのだがうまく言葉にならない

昔と変わらず愛してるわ 私を失うのではないかと心配しないで お互いの心を知り愛し合っている 違う?

大切なのは結果ではなく努力だ 臆病な子供のように寄り添うことだ エリーサベット

あの子に伝えておいて ママも会いたがってると “家に帰るママのために贈り物を用意して”と

君がいとおしい 苦しいほどに どうすればいいのか…

優しく抱きしめて

私に抱かれていると満たされるかい?

ええ とてもいい気持ち

愛してる

お願い 殺してちょうだい 耐えられない もう私には構わないで どうしようもなく冷たい女なのよ 何もかもウソと芝居よ


エリーサベット それは? 何を隠してるの 見せて 破いた写真ね 息子さんの話を聞かせて 話してちょうだい では私から ある晩パーティーで夜を明かした時のこと 客の1人がこう言った “君は女としても女優としても最高だが母性が欠けてる” あなたは笑い飛ばした でもその言葉が心に引っ掛かり不安になった そこで夫とセックスして妊娠した でもいざ妊娠すると親としての責任や仕事の中断が怖くなった お産の苦痛を恐れふくらむ腹を恐れた でもうわべは幸せな妊婦を演じ続けた “今の君は美しいよ”と誰もが言った 何度か堕胎を試みたけど失敗した 赤ん坊への憎悪が育っていった “生まれないでくれ 死産ならいいのに 死んでほしい”と 大変な難産で何日も苦しめられようやく産んだ 泣きわめく赤ん坊にささやいた “このまま死んでくれ” 死ななかった 赤ん坊は泣き続けた あなたは息子を憎みそんな自分を持て余した 子供を親類に預けてようやく舞台に復帰した でも試練は続いた 息子は母に会いたいと言い続けた むげに断ることはできなかった 何とか愛情を持とうと努力したけれど会うたびに疲れ果てた どうしても自分の子を愛せない まとわりつく息子を殴りたくなった “なぜ邪魔するのか”と 息子の分厚い唇や醜悪な体 訴えるような涙目も煩わしかった 何を隠してるの 見せて 破いた写真ね 息子さんの話を聞かせて 話してちょうだい では私から ある晩パーティーで夜を明かした時のこと 客の1人がこう言った “君は女としても女優としても最高だが母性が欠けてる” あなたは笑い飛ばした でもその言葉が心に引っ掛かり不安になった そこで夫とセックスして妊娠した でもいざ妊娠すると親としての責任や仕事の中断が怖くなった お産の苦痛を恐れふくらむ腹を恐れた でもうわべは幸せな妊婦を演じ続けた  “今の君は美しいよ”と誰もが言った 何度か堕胎を試みたけど失敗した 赤ん坊への憎悪が育っていった “生まれないでくれ 死産ならいいのに 死んでほしい”と 大変な難産で何日も苦しめられようやく産んだ 泣きわめく赤ん坊にささやいた “このまま死んでくれ” 赤ん坊は泣き続けた  あなたは息子を憎みそんな自分を持て余した 子供を親類に預けてようやく舞台に復帰した でも試練は続いた 息子は母に会いたいと言い続けた むげに断ることはできなかった 何とか愛情を持とうと努力したけれど会うたびに疲れ果てた どうしても自分の子を愛せない まとわりつく息子を殴りたくなった “なぜ邪魔するのか”と 息子の分厚い唇や醜悪な体 訴えるような涙目も煩わしかった 違う 私はあなたじゃないわ 看護婦のアルマよ 私はエリーサベットじゃないのよ 子供も欲しい 愛せるわ でも私…


多くを学んだわ 私は負けない あなたのようには決してならない 取り込まれない 言葉は無力よ 言うだけなら何でも言える 悔やんでも無駄よ もう手遅れよ あなたはすべき時にすべきことをしなかった 私はあなたとは違うのよ 他人を見捨てずに忠告してあげるわ 苦しむ人に… あなたには何と言えば? 何と呼べばいい? 分からない 私たち? 私? 言葉は吐き気と苦痛をもたらすだけだわ あとについて唱えて 繰り返して “無” “無” “無”よ

無…

そうよ そう それでいいのよ


『仮面/ペルソナ』

とっても遠い所

まだ入っちゃダメよ

なぜ?

途中なの

母さんに殴られるよ

泥まみれだ

入らないで

母さんに言いつけてやる

覚えてなさい

そっちこそ

母さんに言う気?

信じっこないよ

いつだって悪いのはそっちなのに

もう構うな 体を洗いに行け


母さんよ 母さんが帰ってきた

どうしたの?

おみやげは?

そんなものないよ チェレ そこで何をしてんの 優雅に水浴びかい? お入り 感心だね 食器を洗ってくれたのは誰?

チェレ

お前たちかと… まったく怠け者ぞろいだね 服を 慌てないで

チェレには必要ないわ

うるさい お黙り!

床を塗ったから入らないで

何をしたの?

塗り替え

誰も塗り替えなんか頼んでないよ 余計なマネばかりして


食べたい? 食べる? お前の分よ

チェレ チェレ 頭にかぶってるの何?

帽子

貸して

壊されるからイヤ

試しにかぶるくらいいいじゃない 少しだけでいいから 私にもかぶらせて お願い ちょっとだけ ちょっとだけならいいでしょ? ねえ すぐに返すから

ならシャツと交換よ

ずっと?

そうよ

シャツも?

シャツも

はい

ボリシュが… ボリシュ まっすぐ歩きなさい ダメよ ボリシュ

チェレ 待ちなさい なんて子なの 人の服をとるなんて さっさと脱ぐんだよ 何をかぶってるの ちゃんと立って バカな子たち 今度私を怒らせたらお仕置きだからね お入り 困った子だよ ほら 早く


チェレ いい加減にしなさい さっさと食べるんだよ

いらない

もう一度言ってごらん それは何? このスイカは? 言わないとぶつよ

畑のを

勝手に食べたってのかい? 人様のものを勝手に これじゃドロボウじゃないか 聞いた? とうとう盗みを働いたよ

盗み? 盗みだと? 盗みを働くなんてなんてガキなんだ ドアを閉めろ こっちへ来い 教育し直してやる 手を出せ

何をする気?

押さえてろ 二度と盗みを働かんように性根をたたき直してやる

やりすぎだよ 可哀相に 盗みなんか働くから お前をしつけたくて父さんに話したの 私は甘いからね おいで ほら 早く 湿布を巻いてあげるから ごらん 母さんも手をヤケドしたわ 手を出してお前の指をかばったから指のヤケドはこの程度で済んだんだ 母さんのほうが重傷だよ まだ手のひらから煙が出てる ごらん よくお聞き 盗みは何にも増して重い罪なんだよ いいこと? この家にはお前の物なんてないの この家の中にある物はうちの子たちの物だ 私が産んだ子たちだからね お前とは違う この世にお前の物は何ひとつない よく覚えておきなさい 人の物を盗っちゃダメ お前の物なんてこの世にないんだ 分かったね? お前が持ってる物はひとつだけ その体だけなの

シャツもよ

何だって?

何がお前の物だって? 言ってごらん

シャツ…

なんて図々しい こんな恩知らず引き取るんじゃなかった まだ自分の物だと言い張るなんて この恥知らず! 厚かましい子だよ まだ言い張るかい?

あのシャツは私のよ スイカと交換したの


コップ出して

もう十分

飲んで あんたも コップは? いらないの? 可愛くない子だね いったい何が望みだっていうんだい 何を与えりゃいいのか見当もつかないよ さっさとお行き

私も行く

シャツが狙いでしょ 母さんに言ってやる また手のひらを焼かれちゃうわよ

母さんは私のこと愛してくれてるわ

バカ言わないで 母さんの子でもないくせに 孤児院に帰れ チェレは親なしっ子

早く行きなさい!

うちの引き取ったのはお金が支給されるから それだけよ

ボリシュ 学校に遅れるわ

2×5=10 2×6=12

みんな服を持ってる 私以外は どうして? もうイヤ お別れよ お前の面倒は母さんがみてくれるから 来ちゃダメ 二度と戻らないんだから 私は殴られない場所へ行く とっても遠い所よ あんたは家に帰りなさい まったく… 好きなようにすればいいわ ついて来るのも帰るのもお前の自由よ 水を飲みましょ ボリシュ 水よ 早くおいで くんであげるね 空っぽだった


名前は?

ボリシュ

あなたは?

チェレ

本当の名前は?

とりあえず入りなさい

食べて お母さんの名は?

“母さん”

母さんにも名前があるだろ?

何て名前だ?

髪の色は? 金髪とか黒髪とか見た目の特徴は? 家はどこ?

遠く

どうやってここまで来たんだ?

迷ったの

どこで?

母さんを捜してるうちに

母さんはどこへ?

森へ おうちを建てに行くって 出ていったの 家ができるまでは留守番してなさいって

よし 明日町に出て母さんを捜してもらおう 役所がある


あの子よ

本当に? 確かか?

確かよ

この手は?

触らないで

早い者勝ちでしょ

病気なのよ

だったら何なの

名前は?

チェレ

チェレ? ほら 鼻をかみなさい そうよ お利口だわ 年はいくつ?

預けたのは?

産後すぐ 今6歳だ

この子の年は? どんな経緯でホームに?

捨て子で本名は分かりません 母親の身元も不明ですが年は7歳です

私がもらうのよ 母親が誰か知りたい? お聞き 誰でも母親になれるのさ 孤児を引き取れば金が出るしね


嫌がって私の手をかむもんだから縛ったのよ 荷物は靴一足だけ

働けるの?

ええ 農場育ちだとか

その手は?

さあ… ただのヤケドよ

いい子ね 私の赤ちゃんはなんて温かいの

引き取り先の農場を逃げ出したそうよ 服も与えてもらえずに

ちゃんと見せて 何を怖がってるの 名前は?

結局は捨て子よ 本人は違うと言い張ってるけど

前の家では何て呼ばれてたの? 返事は? だんまり? 手がかかる子ね ほら 座って 飲みなさい

いらない

ミルクは嫌い? 言っとくけど好き嫌いなんか言わせないよ 馬小屋に連れていって もったいない

おいで じいさん 孫娘を連れてきたよ ここで寝起きさせろって

母屋は十分に広いだろうに

火は隠して使わないとジャバマーリが飛んでくるよ イモをくすねたんだろ 何してんの 寝なさい

食べるか?

いらない

誰かいるのか?

何でもない ほえるな ブンダーシュ 静かにしろ 何してる

放して

どこへ行くんだ

母さんの所

おいで バカな子だ 死にたいのか? もう寝なさい 明日は早いんだからな これを掛けて 夜は冷えるぞ

おじいさんも寝る?

ああ だから早く寝なさい


私をどう思ってるのか言ってごらん 軽べつしてるの? 支給金めあての守銭奴だと? 言いなさい “私の行いが間違ってました 二度と粗相はしません”

二度と粗相はしません

手にキスを ほら 早くなさい 行って

教会へ通うわけだ


村に二階建ての大きな家を持ってた

青い花 白い花

一階が住居で二階は作業場だ 地域一帯の紡績糸がわしに届けられた 持ってきてくれ わしが生涯に作った服の布を合わせれば教会二つを余裕で覆い尽くすだろう ウソじゃない しかし手が震えてはもう針仕事はできない

星の露を運ぶ黒い凧 僕に恋する黒い瞳の少女 リピチョンベ ラパチョンバ 今日は荷車に乗っておいで リピチョンベ ラパチョンバ 今日は荷車に乗っておいで

上手だ 誰に教わった?

母さん いつも森から合図してくれるの いつでも声が聞こえる 今建ててる家が完成したら私を迎えに来てくれるのよ 私を殴った仕返しにジャバマーリを懲らしめてくれるって 大きなスリッパでね 母さんの特大スリッパで跡形も残らないくらい殴ってもらうの ここにも植える?

いや そこには植えない

なぜ?

空洞だから

空洞?

お墓だ

人がいるの?

いない

どうして?

さあな もう遅い じきに家畜が戻ってくる 干し草を運ばなきゃならん

手伝わせて

ああ


おじいさん おじいさん 待って きれい?

遅れるぞ 手が汚れてる

野生の花?

風に運ばれたんだ

何て花?

キンギョソウ

キリストは花が好き?

好きだとも 急がんと遅刻だ

あの人何を持ってるの?

声を落としてひざまずくんだ

おじいさん 大丈夫?

大丈夫だ 何でもない

ジャバマーリよ キリストはどこ? 見せてくれる約束よ

そうだな 見せよう ついておいで 我が罪を許したまえ 私が逝ってもこの子にご加護を アーメン

キリストなの?

そうだ

血が出てる

花を供えて

痛いのかな?

いや だが触れちゃいけないよ

死んでるから?

そう 皆のために死んだんだ 皆のために

ジャバマーリも?

そうだ

なぜ家にいないの 家畜を餓死させる気? この役立たずが!

なんて汚い言葉だ だが恐れるな 若さがあれば必ず生き抜いていける 何にでも耐えられる そしていいことも必ず起きる

神の祝福を

神の祝福を

順調ですか?

ああ ご家族は?

止めて!

何だ?

見てよ

憲兵だ ウソだろ

知らなかった

ではご機嫌よう

神の祝福を さあ 帰ろうか


憲兵といたわね 一体何を話してたの

私は話してない

答えて 私の悪口を言ってたんだろ 正直に言わないとこの手で殺すよ 仕事をおし! 何を聞いた? あの男の話は全部デタラメよ ハエがとまってる やる気はあるの? 全然まじめに世話をしてないじゃない お前なんか地獄に落ちればいい いやしい捨て子め 渡して 告げ口をしなくなる薬よ

ジャバマーリが告げ口をしなくなる薬だって

頭から血が

ジャバマーリにスリッパで殴られたの

来なさい 大丈夫 すぐ治る おいで 上がって 横になれ ラクになる さあ… 寝なさい ラクになる 寝なさい

来なさい 床を磨いて 馬小屋へ行ってコップを取ってきて

コップ?

ゆうべお前に預けたコップよ 早く!

おじいさん ジャバマーリが… おじいさん? ねえ… コップ取ってきた

何よ こんなガラクタ

死者に平穏なる休息を


待って お願い 待って! 私はここにいるって伝えて

誰に?

母さん 私を捜してるはずよ まだ迎えに来ないの ジャバマーリの農場で待ってるから早く来てと伝えて

分かった 伝えておく

そこにいたの チェレ お昼ご飯を持ってきたのよ さあ座りなさい 座って 私が怖い? スプーンよ 食べて どう? おいしい?

おいしい

ほら これも食べなさい ねえ 何の話をしてたのか教えてくれる? 教会の帰り道や森の近くでも憲兵と話をしてたでしょ? 私のこと? 私が彼の土地を奪ったと? ええ 奪ったわ でも面倒を見て汚れた服も洗濯してやったのに 彼は何て言ってた? 彼の屋敷に私が放火したと? そう密告したの? 何を話したの

何も

今までの仕返しのつもり?

放して

お前はこうやって恩人に報いるの? 数発殴られたから? だから? 腹いせのつもりかい?


ドアを開けて 誰か開けて

小屋に火が

なんてこった

誰か ドアを開けて

おい かんぬきは中だ 水を 何をしてた

あの男の服を シラミだらけだから燃やそうとしたら…

母さん 迎えに来て 一緒にいたいの 母さん 怖いよ 早く来て


こっちへおいで 星の露を運ぶ黒い凧 僕に恋する黒い瞳の少女 リピチョンベ ラパチョンバ 今日は荷車に乗っておいで 君の荷車には乗らない 黒い瞳の娘も欲しくない リピチョンベ ラパチョンバ 今日は荷車に乗っておいで

何を持ってるんだい? 見せて

こんなもの拾うんじゃないよ おいで

早く食べなさい

おなかすいた? これ食べる? 分けたげる

人殺し! 殺そうとしてたわ

何を?

毒を盛ったミルクを飲ませてこの子を殺す気だったのよ

乱暴はやめろ よさないか 外に出てろ

人殺し!

母さん! 母さん! 母さん!

運べ 帰りなさい 子供が見るものじゃない

死んでるの?

行くんだ さあ

死んでる?

そうだ

母さん…


父さん 私も…

誰が“父さん”だって?

黙れ お前の父親は名も無い兵士なんだ 大人の男を見かけたら全員にあいさつしろ

クリスマスを祝って乾杯を

盗んだわ 中に入れないで 閉め出して

母さん キリストに伝えて 私にも贈り物を届けてって 誰も私にプレゼントをくれないの 母さんが死んでから 父さん 神様 無名の兵士 どうかあなたの国に私を迎え入れて


『だれのものでもないチェレ』

荒野

古来“ハウハ”は豊穣と幸福の地と言われ多くの者がその地を目指した そして世の常であるように時を経て伝説は膨れ上がっていった だが確かなことが1つ その楽園にたどり着いた者はいない


パパ 私は犬を飼えないの?

飼えるとも 国に帰ったらな どんな犬がいい?

そばを離れない犬

なるほど そんな犬か そうか 難しい注文だ きっと見つかる 私の可愛い娘よ


飲むか? 蒸留酒だ いつ荒野の中にある砦へ向かう?

2週間後だ 機は熟した 俺が隊長だ 馬車を率いて行く インゲボルグは特別な馬車に 快適な旅ができる 残して行くのか?

いや 娘も連れて行く 例の噂は本当なのか? スルアガだよ

彼は優秀な将校だ 勇敢だぞ だが頭が少し…

皆口が軽すぎる

彼を知ってるのか? 話したことは?

何度もある 一緒に遠征した仲だ 共に戦った 勇敢な男だ 冷静で頼りになる 法にも忠実だ

スルアガの砦へ行くんだよな 彼はいるのか?

近くの大きな砦にいたらしい だが作戦が始まり自分の砦に戻ったはずだ きっといる 百戦錬磨の男だ 荒野では姿を消して瞬時に移動する よく訓練された軍人でもある 会えば気に入る

彼は独りか?

“独り”とは?

妻はいないのか? 子供は? 君と同じで独り者か?

辺境の荒野では人は皆独りだ 他人とのつながりは弱さを生む そうだろ おかしな生き方だ 国を築き家族を作るのが目的なのに だが人は大志のために進む “ココナツ頭”はそこが違う 奴らは家を持たず盗みや殺しを繰り返す

なぜ“ココナツ頭”と呼ぶんだ? “ココナツ”は種族の名前ではないだろ

奴らは全員“ココナツ頭”だ

だが正式な名前ではない

名前が重要か?

名前も知らずに相手を理解できるか?

抹殺するのだから理解しなくていい 皆殺しにする

そうか ピッタルーガ中尉 少々問題が発生してる 私の部下と君の兵の間に溝が生まれているようだ 技師と話をしてくれるか?

分かった

助かる

ああ 明日陸軍大臣が舞踏会を開く 盛大な会だ 娘さんを誘いたい

私の娘を?

ビリタが介添えをする

いや 娘は… 行かせられない 私の娘だ

ディネセン大尉 馬を贈らせてほしい 娘さんに 馬に乗る者は王だ 乗馬を教えよう

娘はもう馬に乗れる 好都合だ 俺の牧場に招待しよう

どうも

見事な馬がいる

招待の件は考えておこう

栗毛の馬だ とても美しい

ありがとう だがまず先に仕事を片づけよう


インゲボルグ インゲ! ピッタルーガ中尉を知ってるか?

チビのお付きがいる人ね

そうだ

どこへ行くにも2人一緒でどっちが主人か分からない

ああ 確かにそうだな

それで…

この前そのお付きが砦で待ってた 戻ったらいたの

何だと?

中尉は中にいた パパを待ってたって

本当か? そう奴が?

正装してた

バカな それはウソだ 奴の狙いは… 狙いはお前だ よく聞け 奴は若い女に目がない ブタ野郎だ 絶対に近づくな いいな

近づくと思う?

それは… 確かにあり得ない 悪かった だが… かわいそうに ここは異国だ 早くデンマークへ

荒野は好き 満たされるから

何だと?

大尉! こちらへ

分かった 今行く インゲボルグ! 待ってろ クソッ ビリタ


コルト 来い 靴を脱げ お嬢さんは戻ってください

もらおう

どうも

やあ

ありがとう コルト マテ茶は? 冷たい茶だぞ

パパ

今はダメだ インゲボルグ

見つけたの

ああ そうか お前はテントに戻ってろ 早く行け

報告したことを我々に話せ 直接聞きたい 早く! 情報があるだろ

大佐について?

そうだ

スルアガは賊を率いてる なぜか女の格好をして もう報告済みだ

実際見たのか?

“ココナツ頭”と親しい地元民に聞いた

よく聞け スルアガ大佐は荒野で兵士を救出に行き行方不明になった その後2つの町に立ち寄ったらしい 元気な姿で だがそこで完全に消息が途絶えた 彼は砦に戻っておらず死体も発見されてない “ココナツ頭”を内偵したが収穫はなかった 奴らがかくまってるのか 忽然と消えたのか 2度捜索隊を出したが行方はつかめなかった ただスルアガの馬が森の近くで見つかった 元気に草を食べてたそうだ 鞍をつけてな まるで主人が近くにいるかのように だがいない 不思議だ あれほどの男が荒野で道に迷うとは 彼を買いかぶってた 荒野は全てをのみ込む しばらくして噂が流れ始めた 今お前がした話だ スルアガ大佐が女の格好で賊を率いてると言う さらに妙なことがある スルアガの愛犬が…

ヘルセイです

愛犬のヘルセイが飼い主と同じ日にいなくなった そこでお前に尋ねたい なぜスルアガが軍を捨てる? なぜ女の格好をする? お前たちの頭は空っぽか?

彼を捜せ 荒野に行きスルアガの物を持ち帰れ 手に取れる物がいい ツテがあるだろ

何か物を?

そうだ 何か形がある物だ 分かるか? 例えばスルアガが着てる女物の服とかな

ビリタ 物資は来ますか?

今輸送中だ ピッタルーガ いつもこうだ 不可能なことばかり求めてくる

さっぱりだ

もう半年も輸送中だ

見苦しいぞ ボヤくな では…

食事にするか?

後でいい


噂を知ってたんですね

まあな 耳にしてた だがあくまで噂だ 荒野では瞬く間に広まる スルアガの噂は信じ難いものが多かった 私が思うに彼は気まぐれな男だった 同感だろ

いいえ

やめろ 中尉 落ち着け 怒っても仕方ないだろ 心を静めて楽しく過ごそう 陸軍大臣の舞踏会に行くのか? 趣向を凝らした会だ

みんな行きますよ では明日

おやすみ ピッタルーガ


インゲ インゲボルグ インゲボルグ どこにいる? インゲ ミルキバー 娘がいないんだ 娘の姿が見えない

大尉 待て 俺が捜しに行く 任せてくれ

気持ちはありがたいが私の娘だ

ディネセン大尉 行くのは無謀だ 彼女は美人だがコルトに逃げる勇気はない

ピッタルーガ お前は行くな ここにいるんだ 舞踏会に出ねばならない


痛くない?

ただのアザだ

星座に見える 流れ星かも

君のお母さんは?

前にもこうしてた気がする 一緒にいた気が

国はどこ? あの人が父親?


娘は? 娘はどこにいる? どこだ?

スルアガ…

娘は? どこにいるんだ! この野郎! 地獄に落ちろ インゲボルグ インゲボルグ インゲ インゲボルグ インゲ どこだ? インゲボルグ 聞こえるか? そんな… バカな インゲ


こんばんは

どうも

水を頂けませんか?

水はみんなのものよ そこを上ると泉があるわ ほら そこよ

誰かいます? この家の人を捜してる

見つけたわ かけて

ここに1人で?

ええ 犬はいる 泉もある 楽にして どうぞ食べて 水はおいしかった?

とても

私の夫があの泉を発見したの 夫は蛇にかまれて死んだ 蛇は好き? 私は蛇を責めようとは思わない

蛇はあまり好きじゃない

許して 普段犬が話し相手なの 人と話すのは変な感じ あなたは人?

そうだと思う

どこへ行くの?

分からない 娘を捜してる 金髪の娘を見たんだね この辺で

どんな姿?

金髪だ とても若い 娘は14歳だった いや 15歳だ

そうじゃなく母親の方よ

あなたの母親?

娘さんの母親よ

なぜ?

ずっと知りたかった

背が高くて美しかった 耐え難いほどに 気難しい面も 夜に咲く食虫植物のようだった 全エネルギーを注いで狙った虫を捕まえる 幸せだったろう お前を生んだ後姿を消した

娘を捨てる母親は珍しい 今度はその娘も?

ああ 娘も消えてしまったようだ

どこから逃げたの?

どこでもない 娘に家はない 私にも 旅から旅への生活だ

あなた以外に家族は?

いない 家族は私だけだ

家族は消え去る運命にある 長い時と共に 荒野にのまれて姿を消す それでいいの

娘を捜さないと

また気が向いたら訪ねてきて 私はここにいる


人は皆それぞれ違う 少年のことを思い出した 日が暮れた後その子を見たのだ それは普通の日だった 普段と変わらない退屈な日 犬が彼を連れてきた 犬は友達を欲しがる 私の中の少女が犬の夢を見る 野生の動物と野生の男 夢の中では血が崖から海へ注ぐ でも少女は大人になり荒野で暮らす くだらないことと決別して 人生を動かし前進させるものは何か

分からない

人生を動かし前進させるものは何か


起きたか

ヘンリックは?

見てないな ホッケーの試合に行くと言ってた この子は良くなった 軟膏を塗って抗生物質をやったんだ 効いたようだ

こんなの初めて 今までうちの犬はかかったことない

急性湿疹だ

急性湿疹?

何かに過敏に反応した その子が

タバコの煙とか?

理解できないことがあって激しく体をかいたんだ イライラして自分を傷つけてしまった

理解できないこと?

なぜお前が長い間留守にしたのか

でも戻った 今は家に

犬は人が思ってるより賢い 先まで考える

散歩に


『約束の地』

マネ

何とか言いな このクソアマ やってることがゴミなんだよ よけるのか?
ちょっと 何してるの?
誰だよ ついてねえ
約束の物をくれないから
だからって大勢でいじめていいの? どこの学校?
次はこれで突き刺すぞ
学校はどこ? この先の中学でしょ? あの子たちと同じ学校? なぜこんなことを? 名前は?
ドヒです ソン・ドヒ
これであの子たちの名前も分かる 今度いじめたら警察に捕まると言って

なぜ子どもを殴るの?
誰が? いつ?
子どもを殴らないで 親子の間でも児童虐待罪で現行犯よ
ふざけたこと言いやがる 親が娘をしつけるのもダメってことか?
帰って 警告したわよ
あの子は実の娘じゃありません でも一緒に暮らして学校にも通わせてる 酔って暴れるのは問題ですが村のためによくやってくれてます ヨンハがいないと村は立ち行きません
だから虐待も大目に見ろと?
そういう意味じゃない 悪いのは酒 酒ですよ

パパはどれくらい頻繁に殴るの? 話せない? なぜ黙ってるの? 殴られてたらダメ
酔わなければ殴らない
ドヒ
はい
大人が子どもを殴るのはすごく悪いことよ あんなに殴られたら誰かに話して 必ず
あの… 帽子をかぶってもいい? 敬礼
やるならちゃんと こうよ

クソガキ そんな所で何してるんだ こっちへ来な なんてガキだ 待ちな どこ行くんだ 逃げたら承知しないよ クソガキ クソアマ バカがいい気になりやがって ほっつき歩くな このアマ クソガキ こら できそこないのクソガキ バカタレ

なぜついて来るの? 私に話でも? じゃあ何? 乗って 飛ばすからつかまってて 朝あそこで何してたの? 海に飛び込むのかと思った
ダンスの練習
帰って 危ないから夜遅く出歩かないこと どうしたの?
私も一緒に行っていい?
帰って
このクソガキ なんで今頃帰ってきたんだ 悪知恵使って遊び歩きやがって

どうしたの? はい 何? 老人の死体? オートバイ? すぐ行きます 4時40分に現場到着 鑑識班を送って消防署にも協力要請を 死亡事件です 事故死と思われます 何が起きたか知ってる? ドヒは何かを見たの?
パパが… パパが追いかけてきたの パパに殴られて逃げたらおばあさんが来た そしたら海に落ちちゃって… 私は殴られないように逃げたの
海に落ちるのを見た?
パパに… パパに殴られたの 逃げたらおばあさんが追ってきた “殺すぞ”って
おばあさんとここにいた? ドヒが何かしたの?
パパが… パパが殴るからイヤで逃げたの 殴られるなと言ったでしょ おばあさんがオートバイで捕まえに来て海に落ちたの すごく怖くて 海が… 海が…
分かった 大丈夫よ

このままここにいてもいい?
ええ とりあえずお風呂に入って ママはいつ帰るって? なぜドヒを1人に?
今度は帰らないと思う ママが行く日に知った 荷物をまとめて出てったの 私と目が合ったんだけど“寝てなさい”って 前は私が“ついて行く”と言うと“早く服を着なさい”って
だから殴られるのはママのせいだと?
ママも私を捨てたから
しばらくここにいる? 
本当? 一緒にいてもいい?
今日はもう寝て

私もこれにする
最小サイズでも大きいわ
かわいいのに
やだな

こっちを見て
上手ね ご飯よ ダンスと歌はどこで?
テレビを見て覚えたの 私はマネが得意
他にできるのは?
昔々はるか昔 海に人魚姫が住んでいました 足が魚の形をしている人魚姫は上半身がきれい 下半身とは全然違う イルカさんはすべすべ 八つ裂きにしてやる
そっくりね ご飯食べましょ
ええと… うちの娘が日付が変わっても帰ってこない 近所の人に聞いたら所長の家にいるって だからこんな時間に来てみた やれやれそこにいたのか 父親を見たら挨拶しろ クソガキ
なぜ子どもを殴るの?
誰が? 誰が殴るって? 知らないと思うがこいつは前から変わり者なんだ 怒ると止まらなくて頭を壁にぶつけたり母親と同じだ 何とか言え
パク・ヨンハさん 軽く考えてるようだけど私は何回も注意したし警告もしたわ
はい ちょっくら酒を飲んだよ その… 前に問題を起こしたこともある
この前お母さんを亡くして気を落としてるでしょ
はい だから1杯ひっかけて来た
ドヒは夏休みの間ここに 落ち着いたら迎えに来てください
それは… そうしてくれれば俺は… そんなふうに考えてくれるなら…
帰って
ちょっと おい 所長の言うことよく聞けよ じゃあな

何?
おしっこしたい
入って 気にしないでね 見ないから
私も入っていい? あったかい 私も飲んでいい?
子どものくせに ひとくちだけ
なぜお酒を飲むの?
眠るために
眠れないの? どうして?
分からない
私はどんなに殴られてもダンスの後はすっきりしてよく眠れるの 教えてあげようか?
見てるだけでいい
おばあさんは嫌ってた 悪知恵使って遊び歩きやがって
大丈夫
悪いことしてないのに殴られたらダメだよね 私は殴られたくなかっただけ

どうしたの? 何してるの? 何のマネ?
殴られなくちゃ 悪いことしたから
気は確か? 自分でやったの?
所長さんは殴らないから 怒ったら殴ればいいのに
怒ってないから やめて

今までどこ行ってた? 何時だと思ってるの?
明日は新学期 家まで制服を取りに
明日新学期なの? じゃあ学校の支度して
私太ったみたい
見せて 背も高くなったね ドヒ
お酒のにおいがする
ドヒ 夏休みも終わったし 家に帰って
服も持ってきたのに パパに会ったらまた殴ろうとしたから逃げてきたの
ドヒ 私はママじゃない ママを捜してあげる
イヤ ごめんなさい これからは言うことを聞いて服をあちこちに脱がない ご飯も手で食べない だから許して ママなんかいらない 誰もいらない 所長さんがいればいい

家に帰って 早く
いい子にして何でもする だからお願い

追い出されたのか 笑える おい あの偉そうな女が何カ月も面倒見るわけないだろ? 親も捨てた子だ これは? 何だ? 見せてみろ 見せろ よこせ これを渡して縁を切るって?
違うもん
おい お前よく見たら大きくなったな そろそろ女の色気が出て来たな お前ら2人 何かしたのか? この前の女がソウルの元カノだとさ 女同士で好きになって田舎に飛ばされたんだ 女と女がイチャついて何すると思う? そんなアマたちってことだ いいか 正直に答えてみろ お前ら2人何かしただろ? だから連れてった
違うってば!

ドヒ どういうこと?
あの女の所に? だから服を買ってくれたの? 女の所に行きたくて?
部屋に入って
こんばんわ どうも変だと思ったが生きてりゃいろいろあるもんだ
何の話?
なんで慌てるんだ? バレてないと思ったか? ガキとさんざん遊んだくせに 大きくなったから飽きたのか?
あいつに何を言ったの? 何をほざいたのよ 勝手にすればいいわ

お腹すいた? 行きましょ 新学期になってまたいじめられてる?
皆は所長が怖くて何も言わない
一緒に遊ぶの?
どうせつまんないし

署まで同行を
ヨンハが所長を告発したそうです 未成年への性的虐待 これは一体どうなってるんだか
分かりました 後から行きます
今来てください 緊急逮捕です

知ってるでしょ? 1カ月この人の家にいたわね? 優しくしてくれた? この人がかわいがってくれた?
はい
ドヒをかわいいと言って所長が触ったこともある?
体を? はい
初めて家に泊まった日は?
お風呂に
服を脱がせて入れてくれた?
いいえ 一緒に入りましたけど
さあ どこを触ったか指してみて 指してみて 所長が触った所を そうしてイヤだと言ったら殴られたこともある?
所長さんは私をかわいがって触ってくれたんです 私の方から好きで抱きついたりキスも

私は何らかの異常な意図をもって身体に接触したことはありません
服を脱がせて子供の体に触ったことは?
あります 服を脱がせて虐待による傷を見たりお風呂に入れたり傷が痛々しくて抱きしめたことも それが問題?
同性愛者だから問題になる あんたは同性愛者だろ ソウルで問題を起こし懲戒でここに 違うか? 違うなら黙ってないで答えろ
それには答えません そんな質問に答える義務はないから
意地を張ったところで損するだけだ
私は暴力によって長い間傷ついてた子をそばに置いていました 私の役目だと思って それだけです

所長さんは?
署で会わなかった?
会いました
当分出られない
どうして?
もし本当にドヒに何かしたなら所長は罪を償うために刑務所へ
パパは?
パパはバキムと示談が成立した 今日中に帰れるよ 携帯あるだろ? 貸して パパに殴られたら僕に電話して

どこで覚えたんだ? 酒を注ぐのが上手いな おい 子どもの頃から体に磨きをかけとけよ でないと母親みたいに人生台無しにするぞ お前はあの変態女にぞっこんでいつもべったりしてやがった おい 何だ? 何だよ
クソ野郎がバカなこと言ってるわ
何だと? このクソガキが 母親のマネしてんのか?
殴って 殴ってよ 女しか殴れないくせに
ざけんじゃねえよ イカれたクソガキが 今日は変だと思ったが お前の母親が乗り移ったのか?
パパ ごめんなさい すごく痛い
何?
痛い
今何て言った?
どうか お願い 言われた通り何でもするからお願い
何て言ったんだ? クソガキ このアバズレが うるせえ 静かにしろ 静かにしろって言ってんだよ 静かにしろ 黙れ 静かにしろってんだ クソガキ
パク・ヨンハ 動くな この野郎
チクショウ 何しやがるんだ 早く行け
はい
立て この野郎 早く歩け
何すんだよ
行け
このクソガキ
じっとしてろ 動くな
強く押すなよ
早く入れ
おい チクショウ ふざけやがって おい そこのクソ女 どいつもこいつもクソばっかだ おい クソ女 お前なんかくたばれ

この前来たのを覚えてる? あと少しだけ聞くわね この前の話はパパに言わされたの?
はい
何て言ったか覚えてる?
“所長に一緒に住もうと誘われた”って いつも枕元で
じゃあ所長がドヒを触ったこともパパが言えと?
はい
他にどんなこと言ってた?
“パパに殴られたことは絶対に言うな” 昨日のことも“言ったら殺す 殺して海に沈めてやる 遠くに沈めれば誰も気づかない”って
イ所長の言った通りだ 母親が逃げてからずっと殴って昨日みたいに性的虐待する時も殴ってた
あの子が言ったんですか?
すらすらよく話したよ 殴られるのがイヤで所長の家に逃げたと イ所長には申し訳ないことをした 面目ない
あの子はどうなるんですか?
このまま母親が現れなければ養護施設に送る

スノさん
はい 所長
あの晩何があったの?
なぜですか? 不審な点でも?
性的暴行の現行犯なんてなぜ現場で逮捕できたの?
番号を教えといたんですがあの晩ドヒから電話が でも急いでかけたらしく返事はなくて父親の息の音と罵倒する声とドヒの泣き声だけ 状況は分かりました すぐ署に連絡して出動を 父親が今まであんなことをしてたとは
ドヒ ドヒがやったの? わざとあんなことを? おばあさんは? おばあさんは? あの男のことは心配ない 二度と会わないから 私は行かないと ご飯を食べて学校も休まないで 夜は危ないから出歩いたらダメよ

あの… 言っていいか分かりませんがドヒには可哀想だと思いながらもよくない印象も持ってます 母親に逃げられ殴られたせいか普通の子とは違う気もするし本心が分かりません 子どもらしくなくまるで小さな怪物に思える時も すみません 生意気なことを
ちょっと止めて
どうしたんですか?
忘れ物をしたから ここで

私と行く?

『私の少女』

間違った道具

おはようございます ハッピー・ファイナンスはあなたを幸せにします あなたの人生や夢を私たちにお任せ下さい 十分すぎる満足などないのです 詳しいことはお電話で
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楽しんで頂けました? どうもありがとう ではこちらへどうぞ 離れないで そしてこれが“マンコム”独自のQ-Void計算システムです 写真はご遠慮下さい “6のパワー”と呼んでいます “6次のコンバージェンス”がビジネスや個人の需要を安定させます
“すべては制御されている”
コーエン・レス 労働不能休暇の申請への調査は本日14時40分です 時間厳守のこと
時間厳守せねば無価値だ
クイン どんな調子だね?
コーエンだ ジョビーさん 前に話したとおり我々は死にそうだ
またか? 医者と話せ 君を失うと困る 午後会う予定だ
今日は困る
もう約束が
断れ 今日中に“超限的背理”を仕上げろ
済んだよ
病理部門の標準冗長性を実行中だ
えらく早いな
ここで働くのは嫌なんです 自宅でもできるのになぜここに来させる?
経営の問題だ クイン
コーエンだ Q-O-H-E-N
俺では対応できない
ではマネージメントと話そう
いや それはいかん 知ってるはずだぞ クイン いいか 文句を言うな ここは悪くないぞ
電話を逃す不安がなければここでも我慢するが
例の電話か 留守電か転送にしたらどうだ? 君には私的な電話を許してもいい
我々は家で電話に出たい
そうか 何とかしてみよう 悪かった
我々は触られたくない

コーエン・レス 存在意義リサーチ部 労働不能休暇を申請か
または在宅勤務への変更
それは経営側が決める ここでは健康問題だけ 何が問題なのかね?
我々は死ぬ
“我々”とは?
我々です 我々自身
君一人だが?
そう見えるだけ
この男は去年健康診断を5回受けてる 馬のように健康だ
髪の毛が抜けた
まったく正常だ 資料によると君は抜群のデータ解析能力だ
エンティティ解析だ それ自体に“命”のあるデータを扱っている 単なるデータよりはるかに複雑だ
死にかけてるならそんな能力はない
我々は死ぬ
俺は死なん
我々は死ぬ
死なん
死ぬ
死なん
死ぬ
死なんよ
よせ 堂々巡りなだけだ
僕が話そう 君は死なん だが誕生の瞬間から生物は死に向かう それが神のご計画だからだ 物乞いも死ぬ すべては終わる 生命はウイルスみたいなもの 完璧なる死を蝕むのだ
もう十分だ
本当だよ
申請は却下する 仕事に戻れ しかし精神科の検査を受けるべきだな
どうだ? クイン 医者は役に立たんだろ 俺に任せれば問題解決だ
帰宅しても?
マネージメントに会わせよう 今夜パーティに来る
パーティ?
住所を教える 来てくれよ 後は任せろ
我々はムリだ
家でシャンプーか?
我々は家で電話を待つ
俺の協力は不要か?
我々はパーティが怖い どこに立てばいいのか
おかしな奴だ どこに立つかだと? 笑えるぜ じゃ 今夜な クイン
コーエンだ

マネージメントは?
静かにしろ 人に聞かれるぞ
マネージメントは?
来たら知らせるよ それまで気分を変えて楽しむんだ みんなに溶け込め クイン
コーエンだ
分かってる
ステキな服ね 最終進化系? 復刻型? 頭脳ばっかり 体は二の次
何のことだ?
座れ 何が問題だ?
我々は家に帰りたい
家に?
あなたは孤独を尊重する方のようだ 我々も一人でいるのが好きです ムダな通勤時間の意味が分かりません 会社ではボックス内で皆がそれぞれ個別に働いています 自宅で働けば生産性は2倍になります 電話を取り損ねる心配もなくなります 我々はもうずっと電話を待っているんです それに… 誰から電話が来るのかは謎ですが我々は期待しているんです 人生の目的を教えてくれるはずだと
相当にイカれてるな レス君
お邪魔してすみません
石頭のクインめ コソコソどこへ? コートをよこせ
彼に会った
誰に?
マネージメントだ
マネージメントは“謎の存在”だ
違うよ
バカを言うな!
我々はどうしても帰る
そうはいかん ちゃんと彼に会わせるから食わずに帰るな クイン
コーエンだ マネージメントとは会った
1つだけ
味の強いものは一切食べないんだ
いいから食べろ 命令だ 食え!
人生の意味は何だ? レス君 未だに答えが分からん 互いに有益なプロジェクトを君に頼みたい 時間はあまりない とても少ない
“願い事は慎重に”と言われたことは?
何のことだ?
家に帰れるぞ “ゼロの定理” 極秘だぞ それを証明できる者をマネージメントは探してる 誰も成功しない ムリなんだ 俺も新人の頃3週間やって気がヘンになった その結果マネージメントに現場から管理に回された 俺には能力が少し足りなかった だから君が選ばれた 失うものは何もない 今頃技術部が君の家で鍵を替えセキュリティを強化してる 君が頼りだよ じき定理を証明できる
何を証明する?
マネージメントは必死だ 君が解析したデータ はどこへ行くと思う? ここだ これを着たまえ 来い “ニューラル・ネット・マンクライブ” マネージメントの“頭脳”の中枢だ 超高度だがまだ進化中 だ うんと静かにするんだぞ エンティティに侵入してる ボブ 働いてるか?
まあまあさ ボブ
そうか クインに“ゼローT”を任せる
時間のムダだ ボブ 2週間もたない
ボブは夏のインターンだ
あなたを“ボブ”と
彼は全員をそう呼ぶ “名前は面倒だ”って ハードウェアのプロだ
まだ若すぎないか?
歩く前からプログラミングしてた よし これが君のソフトウェアだ 毎週君に新しいデータが届く
プロジェクトはいつまで?
さあな 永遠に続くかも 昔ニュートリノは質量ゼロと言われたが質量を持つと分かった ごくわずかだが質量はある 何かが変わるんだ そう考えると夜も眠れない 心配は無用だ 必要な物は全部用意する 人に笑われてると感じたことは? 皆が宇宙規模の悪質なジョークで君を笑ってる そう感じたことは? クイン
コーエンだ
ボブ 働いてるか?
まあまあさ ボブ まあまあさ

とても敬虔な気持ちになるわ 愛の教会に来たなんて
我々は触られたくない
家賃はすごいんでしょうね
我々は建物を所有している ある保険会社から数年前に買った 火事でやられたんだ 前の所有者は修道士たちで誓いを立てていた 禁欲と清貧と沈黙 火事でも誰も叫ばなかったんだ

何しに来た?
親父があんたを助けろって
親父?
大ボス ダース・ベイダ―だ 別名“マネージメント”
彼の息子か?
大事な一人息子 “暗黒の帝国”の世継ぎ 今は夏のバイト中さ クソッ! クソッ! よくこれで仕事ができるな あきれた バカだよ クソッ! ムカつく 人に見られるのは嫌いだ ねえ パパ ジャマだよ これでよし! 覗かれて仕事なんかできっこないよ
隠すことは何もない どうせもう彼のために働いてない
そう思ってりゃいいよ
つまり?
親父はあんたを支配してる
願い下げだ 我々はもう燃え尽きた 辞めると決めたんだ
分かるけどムリだよ
ジョビーさんが…
彼は親父の命令どおり言ってる 彼もあんたも親父の“道具”だよ あの女も
ベインズリー?
道具だ
違う “力になる”って 戻ってくる
彼女はもう来ない コールガールだ 時間で雇われてる
信じない

マネージメントは息子に電話の件を依頼したんだ でもあの子はそんな重要な任務には若すぎると思う
弱気にならないで “Q” ボブは天才少年 スーパー頭脳の持ち主 知らないなら黙ってお聞き あんたに協力できないよ 助けてやりたいさ 電話がかかるように でも協力できない マトモにならなきゃ 複数形はやめな あんたを治してやるよ それには…
精神科医のプログラムを書き換えた?
楽勝だよ 彼女も“道具”なんだ あんたの変な話し方はいつから?
ずっと前からだ 前のセラピストに言われた より人々に近づくための方法だと
いい加減やめろよ 親父が電話を何とかしてくれる 定理の探求を続けるなら 親父 あんたに夢中だ
理由が分からない
僕もなぜなのか考えた で分かった 理由はたった1つしかない あんただよ “Q” あんたは選ばれた人間だ いつか僕らの元に現れると予言された人間  “働き犬”だから選ばれたのさ “よし ハーネスをつけろ” “死ぬまで犬ぞりを引け” “ゼロの定理”って何だと思う?
どうでもいい
ウンコだ すべてはウンコ ウンコでしかないんだ 宇宙は何の意味もないことを証明しようとしてる すべての物質 エネルギー 何もかもは一度のビッグバンによる偶然の産物だ 膨張し続ける宇宙はやがてブラックホールにのみこまれる あまりに強い重力ですべては0次元である“点”に収縮され空間 時間 生命  来世 何もかも消える 何もない ゼロだ
やめろ! そんな恐ろしいこと誰が信じる?
何が恐ろしい? 僕は信じる 完璧で永遠なものはない そう思えば何も心配いらない
“ゼロの定理”は君が探求すべきだ 親父はずっとそうさせようとしてた でも僕が断ったんだ
なぜ?
僕は“道具”じゃない あんたの仕事だよ

起きろ “Q” 見ろ 作り替えた ほら 見ろよ これはプロトタイプの“魂を探す装置”だ
何の用だよ
怒りっぽいヤツだな 寝ないで作ってやったのに あんたが待ち続けてる電話はあんたの空想の産物だ 実際にはない 精神科医に聞いてみろ ドク いるかい? “電話はない”と言って 彼に真実を言うことの許可を与える 妄想だと言ってやれ
本当よ コーエン あなたの妄想なの 気の毒だけど あなたの特定の症状は治さないように指示されてた
よく言った またな
でも私は…
真実は美しくない でも親父が言うように人を自由にする 電話はあんたの魂から来る 魂に接続するんだ あんたの内側からエネルギーが放出される そのスーツがデータを集めてマンコムに送り…
何も信じない君がなぜ魂を信じる?
パラドックスさ 僕は若いから何でも信じられる 知ってたかい? アボリジニの33以上の部族は魂は消化器の下部にあると信じてる 事実だよ 驚くことにそれらの部族は互いの存在を知らない 偶然か? 偶然か? 異なる人々がなぜ同じ考えを持ったと?
伝染した
“Q” あんたは最近すごく面白いね あんたに魂があるなら… 絶対にある スーツが探し出してつないでくれる

入っていい?
マネージメントの息子だ マネージメントを知ってるだろ?
ごめんなさい ジョビーが“協力すればVRスーツを着れる”って あなたはとても… 孤独だったし
間違ってる 我々は一人だが孤独じゃない
コーエン お願い
ボブ ベインズリーだ 長居はしない
“ハワイ風トロピカルな女” 無人島で彼と2人きり
テクノロジーが“誘惑の時”を提供してくれたのさ
そう 彼女は完璧だ 普通なら老人には惹かれない
当然だ
彼が好きなの 彼へのこの想いは確かだわ
でもなぜ?
彼には何かがあるから
だろうとも 防腐剤かな
ねえ 茶化さないで
ごめん
今さらだけど… 私を信じてほしいの 私を離さないと言ったわ
我々じゃない 別の誰かだ
いいえ あなたよ 恐れを克服してた
低俗な仮想世界の錯覚だ
一体何を恐れてるの?
我々は謝罪を受け入れる 君の今後の成功を祈るよ 次の愛情の対象となる誰かをマネージメントが見つける
私の荷物は全部車に積んである 行先は分からないけど… 一緒に来てくれる?
“Q” 行けってば!
あいにく手遅れだ もう帰ってくれ 我々には仕事がある
遠くへ行きましょう 特別な場所 南の島へ 現実の島よ 一緒に来て 私たちには絆があるわ そうでしょ? 心がつながってる あなたには私が必要よ 私はあなたに必要とされたい 一緒に来て 現実世界で一緒になれるのよ 私と一緒に逃げて
それはできない
おい “Q” あんたには心がないのか? 少し休憩するか?
罠に落ちたネズミの気分だ
こんな“墓場”にいたくない 外へ出よう
我々と一緒に? 君と…
僕とあんたで 行こう “我々”って言うな
我々は… 努力してる
立てよ 行こう
1年以上外へ出てない
何があったんだ?
人生のあれこれが
それは誰にでも起きる 自分以外の人を考えてみろ 僕は疲れイラついてる ベインズリーへのあんたの態度で恋愛に対してトラウマが 彼女はあんたにもったい ない女だ 僕は休みたい だから閉じこもってないで一緒に外へ出よう 今日はすごい日だ 公園へ行こう この新しい曲を聴くといい 行こう

揚がらないよ シッポがないと空気力学的に難しい 過去に恋人は?
いたよ 君くらいの年齢の時にいつも一緒だった 散歩や映画 芝生で寝転び彼女が両親に呼ばれるまで星を眺めたりした 我々は彼女をとても愛してた
どうなった?
結婚したけど我々は彼女から離婚され二度と会ってない
幸せな寓話に感謝する 僕も早く離婚してみたい 同年代の女の子を知らない 年を取るって退屈そうだ 老人は毎日同じことばかりする 同じ曲を何度も何度も聴いたり
いい曲だから
かもね だけど古くなるよ 僕は15歳だ 15歳で死ぬほど人生に退屈してる あんたの年になったらどうなる? クラッシュしそうだ 何か食べないと ホットドッグどう? バカ2人にぴったりだ
ピクルスも頼むよ
うん 分かった ベインズリーにまた会いたいよ 別れるなんてバカだな 分かった 行くよ 彼女を捨てるなんてバカだと気づいた?
私は考えてるんだ
“私”って言ったね?
だから私は… 努力してる
そういうあんたが好きだ 新しいことをやるのに年は関係ない

あんたは本物か? 私の想像か?
どうでもいい 君は神経ネットの一部だ
答えはないのか?
質問による
生きる目的は?
いい質問だが尋ねる相手を間違ってる 私は君が思うような崇高な存在でも“電話の主”でもない 神でも悪魔でもない 真実を求めるただの人間だ
真実とは?
見てみろ そうとも 封じ込められた混沌だ 終末はすなわち混沌 始まりと同じように
“ゼロの定理”が証明できた
まだだよ マンコムはデータを解析中だ
なぜすべては無だと証明したいんです?
“すべては無”ではない 私は実業家だ 無のものなどない
何だ?
無秩序とはすなわち商機だ 金になる カオスには豊かな金脈が眠る マンコムはそれらを採掘して儲けるのだ 神を信じたがる人間の悲しい一面とはより崇高な目的を求めるあまり人生が無意味に思えること すべては“永遠”への通過点でしかなくなる 君を選んだ理由はかなり皮肉だ 君は私のプロジェクトと正反対だからだ 信念の人だ 電話が人生の意味を教えると頑なに信じた 君はその電話を待ち続けるあまり無意味な人生を送った すまんがもう君を必要とはしない
デタラメのクソ野郎! 悪魔め! 人でなし! 私を利用しボロボロにした
すまんがもう君を必要とはしない すまんがもう君を必要とはしない すまんがもう君を必要とはしない すまんがもう君を必要とはしない
“マンコム” 人生の良いことをより良く “マンコム” 人生の良いことをより良く
間違った道具だったな

前にここへ来たときは 君の目を見られなかった 君が天使のようだから 君の肌に思わず涙があふれた 君は羽のように浮かんでいた 美しい世界に 僕も特別な存在になりたい とても特別な君のために でも僕はヘンな奴 すごくイカれた奴 ここで何をやってるんだろう 僕の居場所はないのに

『ゼロの未来』