下品でポルノ的な食い物

シリアル トースト ピーナツバターもなし りんごドーナツを食べて

何を?
“ブール・ドゥ・カカウエット” ピーナツバター 
そういうのは置いてない
聞いただけよ パスタはどこかしら 奥の右 ドッグフードの先
メルシー
いいえ
〈ブール・ドゥ・カカウエット〉
〈アメリカ人の20%は肥満よ ピーナツなんか 猿よ〉
〈どこでも我が物顔だ〉
〈44年に上陸したからって偉そうに〉
〈私たちを洗脳してる 孫は服も音楽もテレビもアメリカよ〉
〈今に朝昼夜もハンバーガー〉
〈味覚がないのよ〉
〈教養もない〉

パプリカのマリネよ ガーリックたっぷり
ありがたいよ 故郷を思い出す
パンある? じゃ見てないで食べて スタンはバーベキューのことを? どういうつもりだか彼本気よ
近所の連中と親しくなれる
親しく… ゾッとする
最高にうまい “クリームの国”に住むとは 昨夜のレストラン スープ 肉 パイにクリームだ
当然バターもね
最悪だ 何にでもバター
自然に反する
つまり?
人体は大量の脂肪と戦えないの バターは体内組織に入ると沈殿し大動脈を硬化させる でもオリーブオイルは体の中を撫でるように流れ香りだけを残す
そう 聖書にも出てくる

アル・カポネが言った “礼儀正しく かつ銃を手に頼め”と

次の章では俺を“最低なクソ野郎”として描く 自分をよく見せようとは思わない だがこの章に登場する俺は“よく見ればいい奴”なのだ

コーラ以外にないの?
客の期待はこれ
コーラ?
脂っぽいアメリカの食べ物さ 下品でポルノ的な食い物 フランス人はヘルシーな食事にウンザリ ゆで野菜とかね ケバくてくどいのがいいんだ 荒っぽい肉の塊とか
そうかしら
信じて 売春婦みたいに客が殺到する

アメリカ人の作るハンバーガーが夢なんだ
10分以内に夢が叶いますよ

食べてる?
最高のパスタだ
あなたがイタリア人だとバレるよ
クリームを入れて味を変えたわ

ダメだ 一度に炭を入れすぎる
いつもこうやってますよ
時間はかかるが薪が一番だ
その炭は質が悪い ミシェルの店のでないと
薪がいい
全部捨ててやり直すほうが早いです
2分後肉は完璧な焼け具合ですよ
お土産に手作りドーナツよ

クソッ!
あなた
マギーすまん だがお前のパスタのうまさは昔ながらの表現が合う “最高にクソうまい”
他の表現がいいわ
たまらんよ NY以上だ
記憶の混乱ね トマトはスペイン産よ 味がない
アルツハイマーかも
お前の料理の腕はすばらしいよ
郷愁が味を補正しておいしいと思わせてるの
お前たち正気か? 母さんを褒めちゃいかんと言うのか? イカれた家族だ

神父さま どうも
来ないで頂きたい
どうして?
地獄のような生き方をしている
だから告解を…
あなた方一家は魔物の化身だ 悪魔と手を結んでいる 聖なる神の家から去るがよい!


『マラヴィータ』

極度の切望

“エビアン”のクリームを使ってるな 香水は“レール・デュ・タン”だ 今日はつけてない こんな単純な質問で私を分析できると?

そんな風には…
君は野心家らしいな でも高価なバッグに安物の靴とは野暮な格好だ 都会にあこがれる田舎娘といった感じだ 栄養がよく背は伸びた でもご両親は貧しい階層だ そうだろ? ウエストバージニアの訛りが残っているな 君の父上の仕事は? 炭鉱で働いてたのか? 君はいつも男の目を引いた そして車の中でヘビー・ペッティングだ でもそんな生活から逃げたかった だからFBIに飛び込んだ
詳しい分析ね でもその強力な洞察力をご自分に向けたら? 試してみたら? ご自分を見て正直に書くのよ 怖いんでしょ?
昔 国勢調査員が来た時そいつの肝臓を食ってやった ワインのつまみだ

血は止まったな
何でもないわ かすり傷よ
首の主はベンジャミン・ラスペール 私の元患者で何と言うかセックスの面で少し変態だった 私は彼を殺さなかった 隔離しただけだ 治療を嫌がったのでね
では誰が殺したの?
さあね でも彼にとっては幸せだよ 治療は不可能だったから
ドレスを着てお化粧を 女装の趣味ね
生存中に? 違うな 典型的な躁鬱病だ 単調で退屈さ 実験台にされたんだろう 変身願望を持つ犯人の仕業とか… 君は彼を見てどう感じた?
怖かったけど刺激的で…
上司のクロフォードは明らかに君が好きなようだ
あり得ないわ
君とセックスしたいと思ってる 年配だけどね 夢を具体化して君とファックすると思うか?
くだらないわ それはミグズの汚い言葉と同じね
彼は死んだ

星形の銃弾の進入痕が胸骨の上にある 銃口を押し付けた跡も 明らかに殺人 地方の出じゃありません 耳にピアスの穴が3つ ラメ入りのマニキュアも都会的です 爪が2本割れていて爪の下に土か砂があり 逃げようともがいたのか… ノドに何かが… 皮膚が2カ所大きなダイヤ形に剥がれている 銃弾の出口の傷が第2脊椎にある 右肩胛骨から約15センチ 手首にヒモの跡あり 足首にはなし 皮膚を剥いだのは死後で…

娘を連れ去った方にお願いします キャサリンは優しい娘です お分かりでしょう 今主導権はあなたのほうにあります あなたも愛や同情をお持ちでしょ それを世界中に示すチャンスです あなたにも慈悲の心はあるはず きっと娘を大事に扱う広い心をお持ちでしょう あなたは力がある お願いです 名前はキャサリン 
利口ね
釈放して
とても賢明よ
名前を繰り返してる
キャサリンを物でなく人間扱いさせようとしてる
娘を釈放して下さい

彼を殺しに駆り立てるものは?
怒りか 社会の冷たい仕打ちか 性の抑圧…
違うね 極度の切望だ それが本質だ 切望の始まりは? まず欲しい物を探す? 質問に答えろ
つまり…
毎日見てる物を欲しがる事から始まる 君の体も多くの目にさらされてる いつも目が自然に何かを追い求める

『羊たちの沈黙』

施術

父が言ってた “人間に必要なのはハンマーやねじまわしだ” “指の代わりにな”と ネコで試したら神への冒涜だと言われてな 父に殴られたんだ 冒涜じゃない 力学であり工学技術だ
何してる
わからんか 終戦させるのだ 新種の誕生で人類は1つになる
正気なのか?
私が止めてやる 互いを理解させるのだ ご覧のように別々の脳を合体させた 左の脳は共産主義者だ 右の脳はナチスだ 多すぎるな 少し取ろう しまった これでいい 被験者は現在息をしてない では最終段階だ 〈3〉〈2〉〈1〉〈今だ!〉 ちょっと調整に失敗したようだ でもまた造れる!
やめてくれ
やらせてもらう こっちへ来い 何をしようかな そうだ このカメラを頭に埋め込むか ウケるかもな
愚か者め
ビジョンのある人間はいつも誤解される だがこの映像がある 疑う者も納得するだろう
お前は異常者だ! 何が博士だ 貴様は病んでる!
この私が病んでるだと? 誰もが病んでるさ ナチス 共産主義者 資本主義者もだ そういうクソどもを私の創造物が排除してくれる
お前の創造物は異常だ 見ろ どいつも不良品だ
よろしい 昔父に監禁されかけたよ 精神的な不良品だと言われてね それでしかたなくだ 父に薬を注射して麻痺させた だが目は動かせるから施術を見ることが…


『武器人間』

ドクター

いい加減に諦めろ 無駄だよ すっかり萎えきってる お前のせいじゃない 私がお前に飽きたんだ 正直うんざりだ 片付けが終わったら帰ってくれ
私が何を?
何をしたかじゃない お前は醜く汚く皺だらけで息が臭い カバーを殺菌しとけ ふぬけた死人のような顔で見るな 世界は壊れない お前にも私にも もう終わりにしよう 疲れたんだ 他の女を思いながらお前と寝るのは いい匂いがして若くて皺一つない女 だが私の夢想は叶わない 結局またお前が相手で反吐が出る思いがして自分が嫌になる その繰り返し
今までずっと?
ああ もう何年も
その陰険さが不幸の元ね
やめろ 聞きたくない
私は美人じゃないし口臭は胃潰瘍が原因とご存知でしょ 今までは気にしなかったのに 奥さんが死ぬ前からだわ…
それ以上話す必要はない あの頃から嫌悪を感じてた 妻の死後痛みのはけ口が欲しかった 相手は誰でもよかった 雌牛でもな 娼館は遠いし 2か月に1度では歳をとったとはいえ私には不十分だ 被害者面をしてないで帰ってくれ
なぜ今頃気づいたの?
もっと早く気づくべきだと? 入院中はすっかり忘れてた 痛みは人を感傷的にする 帰れ お前に自尊心はないのか?
あなたには少しもないわね
確かに
私が無分別な行動をとったら?
やれよ だが気をつけろ ただでは済むまい
私がバカだったわ 言っても仕方ないけど
では
なぜ私を見下すの? 萎えた息子を立たせたいから? 自分の娘に触るのを見ても黙ってるから? あなたの欺瞞を助けたから? あれほどひどく扱った奥さんを“愛してた”と言う嘘を信じてあげたから?
もうよせ 出て行け 仕事がある
私を捨てたり出来ないわよ 汚い仕事を引き受け子供の世話もし治療も手伝った 今のは本心じゃない 試そうとしただけよ “この女どこまで耐えられる”と 私だって疲れたわ 私には知恵遅れの子が2人いるのね あなたの方が問題児ね
黙って死んでくれよ


『白いリボン』