車で空港に行って戻る長い道のり

ジルはしばらく眠った。僕はプールに浮かんで、どっちつかずの不安感が消えていくのを感じていた。集団でどこかに行かされる、計画通りに旅をするという居心地の悪さがなくなってきた。この場所は完璧に近く、ここに連れて来てもらったことがどれだけ幸運だったかを自分に言い聞かせる気にもなれないくらいだった。新しい場所の最良の部分は、我々自身の歓喜の叫びからも守られなければならない。言葉は数週間後、数か月後の、穏やかな夜のために取っておく。そんな夜のちょっとした一言が、記憶を蘇らせるのだ。誤った一言で風景は掻き消されてしまう、と我々は一緒に信じていたように思う。この思いそれ自体も言葉にされぬものであり、我々をつないでいるものの一つなのだ。

目を開けると、風に流される雲が見えた。疾走する雲。一羽のグンカンドリが気流の中に浮かんで、長い羽をじっと水平に広げている。世界と、その中のすべてのもの。自分が原初の瞬間に抱かれていると思うほど僕は愚かではなかった。これは現代の産物だ。このホテルは、客が文明から脱出したと感じるようにデザインされている。しかし、それほどナイーブではないにしても、僕はこの場所について疑いを掻き立てる気分でもなかった。僕たちは半日ほど苛々した気分を味わったのだ。車で空港に行って戻る長い道のり。そして今、体に冷たい淡水を感じている。太陽の上を飛ぶ鳥、低空飛行する雲の速さ、その巨大な頂が転がっている。僕もプールの中でふんわりと漂い、ゆっくりと回転する。リモコンで快楽が操作されているかのように。僕は、この世界に生きるとはどういうことかわかったように感じた。そう、これは特別だ。真剣な旅人の探求の端で輝いている、天地創造の夢。剥き出しの自然。後はジルが薄いカーテンの向こうから歩いて来て、黙ってプールに体を浸すだけだ。

 

『天使エスメラルダ 9つの物語 天地創造』