何もかも昨日の晩のテレビでやっていましたよ

「きみは自分を守ることができないんだよ」とわたしは言った。「それどころか、きみは檻のなかで、この世でいちばんぬるぬるした、恐れられている冷淡な生き物と一緒にいるんだ。蛇。蛇の悪夢でうなされる人だっているのに。ずるずると這いまわり、冷血の卵を産む脊椎動物。精神科の医者に行く人だっている。蛇は我々の集団的無意識のなかに、特別ぬるぬるした場所を占めているんだ。そしてきみは自分から望んで、世界中で最も有毒だという蛇が三十も四十もいる閉ざされたなかへ、入っていこうとしてるんだよ」

「何がぬるぬるしてるんです?あいつらぬるぬるなんかしてませんよ」

「ぬるぬるしてるってことで有名だけど、俗説だよ」とハインリッヒが言った。「彼は二インチの犬歯を持ったガブーン大蛇と一緒に檻のなかへ入るんだ。多分一ダースのマンバもね。マンバはたまたま世界でいちばん敏捷に動く陸蛇ってことなんだよ。ぬるぬるなんてちょっとポイントからはずれていない?」

「それこそパパが話しあいたいところだ。犬歯。蛇に噛まれること。一年に五万人が蛇に噛まれて死んでいる。昨日の晩テレビでやっていたよ」

「何もかも昨日の晩のテレビでやっていましたよ」とオレストは言った。

わたしはその答えに感嘆した。彼のことも感嘆したのだと思う。彼はタブロイド新聞的な向上心から離れて、堂々たる自己を確立しようとしていた。彼は慈悲心なく訓練し、第三者のように自分のことを語り、炭水化物を蓄えていくだろう。彼のトレーナーは常にそばについて、友人たちはそのわくわくする危険なオーラに、ひきつけられていた。彼はそのときが近づくにつれ、生命力を成長させていくだろう。

 

『ホワイト・ノイズ 三章 ダイラーの宇宙』