わたしたちはみんな必要としているわ

バベットはほとんどいつもスウェット・スーツを着ていた。それは何の飾りもないグレーの服で、ゆるくてだらりとしている。彼女はその服で料理をし、子供たちの学校への送り迎えをし、それを着て金物店や文房具屋へ出かけた。わたしはそのことをしばらく考えてみたが、特別奇妙なことではないし、何も心配することでもないし、彼女が無関心と絶望の淵に沈みこんでいるのだ、と信じる何の理由もないと考えることにした。

「気分はどうだい?」とわたしは言った。「ほんとうのことを言ってくれ」

「ほんとうのことって何かしら?わたしは前よりワイルダーと一緒に多くの時間を過ごしているわ。ワイルダーがなんとかやり過ごすのを助けてくれているの」

「ぼくは健康で社交的な、以前のバベットのようなきみを頼りにしているんだよ。きみが必要としているのと同じくらい、おそらくそれ以上にね」

「必要なことって何かしら?わたしたちはみんな必要としているわ。どこに特別なとこがあるの?」

「きみは根本的に同じ気分なのかい?」

「わたしがつまり死ぬほどの病気にかかっているのかという意味?恐怖はなくなっていないわ、ジャック」

「ぼくらは活動的にしていなくちゃいけないよ」

「活動的なのもいいけど、ワイルダーの方がもっといいわ」

「ぼくの想像かもしれないがね」とわたしは言った、「それとも彼、実際におしゃべりが減ったかい?」

「十分おしゃべりしているわ。おしゃべりって何かしら?あの子にはおしゃべりしてほしくないわ。少なければ少ないほど、いいもの」

「デニスがきみのことを心配しているよ」

「誰が?」

「デニス」

「おしゃべりならラジオね」と彼女は言った。

デニスは母親が日焼け止めを何度も重ねて塗ると約束しない限り、ランニングに行かせたがらなかった。彼女は家の外まで追いかけて、最後にバベットの首の後ろにローションの塊を塗りつけ、それから爪先立ちしてまんべんなく伸ばしてやった。彼女たちはこの必要性について激しくやりあっていた。デニスは太陽の光は色白の人にとって危険だと言う。母親の方は企業がみんなやっている病気になるぞという宣伝だとやり返す。

「それに、わたしはランナーなのよ」と彼女は言った。

「ランナーというのは定義によれば、立ったり歩いている人より、ダメージを受ける光線に当たる可能性は少ないの」

デニスはくるっとわたしの方へまわり、両手を広げて、身体全体でこの人をなんとか正してやって、というふうに懇願した。

「最悪の光線は直接にあたったときなの」とバベットは言った。「ということは人が早く移動すれば、それだけ光線の一部や、かすめた光や、それた光しか受けない可能性が多くなるってことよ」

デニスは口をあんぐりとあけ、膝をがくっとさせて身体を曲げた。正直言ってわたしには、彼女の母親が間違っているという確信がなかった。

「それはみな会社間の連携なのよ」とバベットが決めつけるように言った。「日焼け止めクリーム、市場、恐怖、病気。どれか一つでも外すわけにはいかないのよ」

 

『ホワイト・ノイズ 第三章 ダイラーの宇宙』