第一は本物、第二は人為的

歩道を埋めた父親と息子たちは、半ば中身をさらけ出した建物のあちこちを指さしていた。マーレイが、下宿先がここからほんの数ヤードのところにあるのだが、わたしたちの方へにじりよってきて、何も言わずに握手した。窓という窓が吹き飛んだ。わたしたちはもうひとつの煙突が屋根に沈み落ち、はがれたレンガが芝生の上に二、三個転がり落ちていくのを見ていた。マーレイはまた私たちと握手し、立ち去っていった。マーレイはまたわたしたちと握手し、立ち去っていった。

やがて毒っぽい臭いがした。それは絶縁体の燃える臭いだったかもしれない―管や線を包むポリスチレン―それとも一ダースか、それ以上のほかの物質か。つんとしたひどい悪臭があたり一面に充満し、煙や焼け焦げる石の臭いに勝ってきた。それは歩道にいた人々のようすを一変した。顔にハンカチを当てる人、たまりかねてあわてて立ち去っていく人。悪臭の原因が何であれ、わたしたちはそれで人々が裏切られたように感じたのだとわかった。いにしえの広漠とした、恐ろしいドラマが、何か不自然なものに、何か小さくて厄介な侵入物にとってかわられようとしていた。わたしたちの目もほてってきた。群衆はばらばらになった。まるでわたしたちはもうひとつの死の存在を無理に認識させられたようだった。第一は本物、第二は人為的。悪臭はわたしたちを追い払ったが、その下にはもっと悪く、死は二通りに、ときには同時にやってくる感じがあった。そして死はどのように人の口や鼻に入りこみ、どのように匂うのかによって、人の魂に違いをつくることができた。

わたしたちは家を失った人々や、狂人たちや、死者たちや、また今では自分たち自身のことを考えながら、車へ急いだ。これが燃えた物質の臭いがもたらしたものだった。わたしたちの悲しみを複雑にし、わたしたちをやがて訪れる自分たちの終末の秘密にさらに近づけた。

 

『ホワイト・ノイズ 三章 ダイラーの宇宙』