安易な信仰

花婿と花嫁が指輪を交換し、誓いの言葉を交わすと、大勢の観客たちが写真を撮りはじめる。通路に立ったり、手摺に群がって、家族の者がみな不安そうにシャッターを押している。彼らは反応を一つのかたちにし、記憶をまとめ上げ、眼前の光景を中和し、その不気味な力を払い除けようとしていた。師が朝鮮語で儀式の文句を唱える。するとカップルたちは列をなして壇の前を進んでいき、師から聖水を頭に降りかけてもらう。ロッジは、花嫁たちがベールを上げるのを見て、あわててクローズアップしてみたものの、眼前に繰り広げられる出来事からかえって疎んじられているように思えて気が滅入る。だが彼は、じっと目を凝らして思いに耽る。古き神がこの世を去るとき、未だ使い果たされざるすべての信仰心は一体どうなるのだろう?彼は群衆のなかのそれぞれの顔を眺めてみる。柔和な顔、丸い顔、長い顔、不似合いな顔、浅黒い顔、不器量な顔。彼らが安易な信仰という原理に基づいて一つの民族を成しているように、彼には思えてならない。ここにあるのは、盲信することによって一層奮い立つ集団なのだ。もはや彼らの口をついて出てくるのはちゃんとした言葉ではなく、お決まりの空疎な文句が繰り返し唱えられるだけのこと。ありとあらゆる事柄が、知り得ることの総和が、真実のすべてが、単純な二、三の決り文句に凝縮され、そっくり真似られ、頭に叩き込まれ、伝達されていく。そしてここに、型にはまって寸分も違わぬ機械的なドラマが、生きた人間によって演じられるのかと思うと、彼は空恐ろしくなった。ものごとを推し測る尺度や理解の欠如、愛とセックスが幾度も掛け合わされるあのさま、おびただしい数を成しながら統制のとれた群衆。こうしたことに彼は心底から恐怖を覚えた。刻まれた一つの彫像へと変容してしまったような人の群れ。ピューピューと笛を吹き鳴らしてやまぬ一万三千の部品でできた玩具のように、無邪気でありながら脅威を孕んだ存在。双眼鏡をのぞいたまま、今や彼は、軽い絶望感に苛まれつつも、どうあっても娘を見つけ出さなくてはと思う。あの子がどんな子だったか、思い出してみなくてはと思う。健やかで、頭の回転が早く、生真面目な二十一歳の娘。自分というものをちゃんと持っていて、想像力が豊かで、微妙な陰影に富み、やつらがどんなに頑張っても拭い去ることのできない複雑で繊細な個性の持ち主だったあの子。というよりも彼は、娘がそういう資質を持っていてほしいと願い、そう祈りながらも、群れなす彼らの祈りの力に不安を覚えた。古き神が去るときは、蠅であれ、瓶の栓であれ、何でも崇め奉られるのだ。恐ろしいのは、自分たちの必要しているものを与えてくれるからこそ彼らがあの男を信奉していることだ。あの男は彼らの切ない思いに答え、彼らから自由な意志や自分なりの考えというものを奪い、その重荷から解放してくれるのだ。

 

『マオⅡ』