逆進化

彼女は百から七ずつ引いていくという計算をした。それをすると、気分がよくなるのだ。ときどき間違えることもあった。奇数が曲者だ。デコボコ道に突き当たるように、二で割り切れる数の滑らかな流れに抵抗してくる。だからこそ、医師たちは彼女に七ずつ下がっていく計算をやらせたのだ―簡単すぎないように。だいたいのときは一桁の数までつまずかずに行けた。もっとも危なっかしい部分は二十三から十六だった。彼女は十七と言いたくなった。いつでも三十七から三十、二十三、そして十七と言ってしまいそうになる。奇数が自己主張する。医療施設では、医師が間違いに微笑むこともあったし、気づかないときもあった。あるいは、テスト結果のプリントアウトを見ていた。彼女は記憶の欠如に悩まされた―これは家系に深く関わる。しかし、元気でもあった。年齢のわりに脳は正常。四十一歳で、MRIに映し出された範囲内でだが、すべたが普通のように思われた。心室は普通、脳幹と小脳も、頭骨の基部も、海面静脈洞の付近も、下垂体も。すべて普通だった。

彼女はテストや検査を受けた。MRIを受け、心理測定を受け、単語の組み合わせテストをやり、思い出を語り、神経集中し、壁から壁まで真っ直ぐに歩いた。そして、百から七ずつ引いていくという計算をした。

それをすると、気分がよくなった。百からカウントダウンすること。彼女はそれを日常の流れの中でときどき行った。通りを歩きながら、あるいはタクシーの乗りながら。これは歌詞を書くのと同じようなものだった。主観的で、韻は踏んでいなくて、少し歌のようだが、厳密さも具えている。固定した秩序をもつ伝統―ただし、逆に向かうものだが。別種の反転の存在を試すこと。それを医師はいみじくも「逆進化」と名づけた。

 

『墜ちてゆく男』