彼または彼女の鳥

彼らは音を消してテレビを見ていた。

「父が自殺したのは、私が誰だかわからなくなった姿を私に見せたくなかったからよ」

「それを信じるのかい」

「ええ」

「じゃあ、僕も信じるよ」と彼は言った。

「いつか私のことがわからなくなるだろうという事実」

「信じるよ」

「まさにその理由で自殺したの」

彼女は一杯余計にワインを飲んで、少し酔っ払っていた。彼らは深夜のニュース番組を見ていた。コマーシャルが終わったとき、彼は音量ボタンを押そうかと思ったが、そうせず、彼らはそのまま音のないテレビを見続けた。特派員がアフガニスタンだかパキスタンだかの荒涼とした風景に立ち、肩越しに遠くの山を指差している。

「彼に鳥の本を買ってあげないと」

「ジャスティンに」

「いま鳥の勉強をしているの。それぞれの子供が一種類の鳥を選び、それについて勉強する。彼または彼女の鳥ってことになるの。彼または彼女の羽のある脊椎動物。男の子の場合は彼で、女の子の場合は彼女」

テレビでは、航空母艦のデッキから戦闘機が飛び立つ資料映像を流していた。彼は彼女が音量ボタンを押してというのを待っていた。

「ジャスティンはチョウゲンボウの話をしてるわ。チョウゲンボウって何?」と彼女は言った。

「小さなタカだよ。送電線に止まっているのをよく見たな。西部のどこかにいたとき、何マイルも続いていた。まったく別の人生を生きていたときの話だね」

「別の人生」と彼女は言い、笑った。そして椅子から立ち上がり、浴室に向かった。

「出るときは何か着てきなよ」と彼は言った。「そうすれば、きみが服を脱ぐところを見られるから」

 

『墜ちてゆく男』