私は別の時間帯に戻ってしまったに違いない

マーティンは絵画の前に立っていた。

「私はこうしたオブジェを見ているんだ、キッチン用品なのにキッチンから引き離されたオブジェ。キッチンから、家から、あらゆる実用的で機能的なものから自由になったオブジェ。私は別の時間帯に戻ってしまったに違いない。長いフライトのために、普段以上に混乱しているのだろう」と彼は言って、しばらく黙り込んだ。「というのも、この静物画にどうしてもタワーを見てしまうんだ」

リアンは彼のいる壁際まで歩いて行った。問題の絵には七つか八つのオブジェが描かれていた。背の高いオブジェは筆遣いの荒い背景の前に描かれている。ほかのオブジェは箱やビスケットの缶で、暗めの背景の前に積み重ねられていた。その列全体が、不安定な遠近法と抑え気味の色によって、奇妙にも慎ましい力を帯びていた。

彼らは一緒に絵を見つめた。

背の高いオブジェのうち二つは暗く陰気だった。煙のような痕跡と汚れがあった。そして首の長いボトルがオブジェの一つを部分的に隠していた。そのボトルは白いボトルだった。暗めのオブジェ二つはぼやけていて、それが何か言葉で表現できかねるものだった。それこそ、マーティンが話していたものだった。

「ここに何を見る?」と彼は言った。

彼女は彼が見ているのと同じものを見た。タワーを見たのだ。

 

『墜ちてゆく男』