どっちが本物でどっちが偽物か分かったものじゃないわ

イタリア人たち。彼らは団扇とオレンジエードを手にして、玄関前の階段に座っていた。彼らは自分たちの世界を作っていた。彼らは言う、俺に勝るやつがいるか?母はそんなこと決して言わなかった。彼らはそこに座り、そんなことを言い、ご機嫌な時間を過ごす術を心得ているのだ。何十年も昔を振り返りながら。彼女は女がひとり雑誌を団扇代わりにして扇いでいるのを見たが、それはまるで微風の百科事典のようだった―いまだかつて吹いたことのあるすべての微風が載った書物。暑さで麻痺した街。町角で死んでいく馬たち。俺に勝るやつがいるか?

彼らの話し声が向こうから聞こえてきた。

あの子は動物が本物だからという理由で私を動物園に行かせようとする。あれは檻に入った動物でしょ、と私はあの子に言ってやった。あれはブロンクスに住む動物でしょ。テレビなら熱帯雨林や砂漠に住む動物が見られるのよ。どっちが本物でどっちが偽物か分かったものじゃないわ。こう言うと、息子は笑った。

自業自得だ、と思った方が彼女には楽だったろう。彼が家を出たのは自分が薄情で、バカで、怒りっぽかったから。家事が下手で、母親失格で、冷たい女だったからだ。しかし、こうした口実のためにもっともらしい筋書きを構想することはできなかった。

しかし、それは何よりも甘美な蜜月だった。彼が賭博師や警察の話を囁く―二人はベッドに横になっている―縫製工場のボスたちや社内郵便物配達人たちと過ごしたその日の出来事を話して聞かせる。夜遅く、彼はこうした話で彼女を笑わせた。愛し合った夜、事が終わった後、ベッドの中で寄り添いながら彼女に囁きかける。たとえ一文無しの時でも、彼は毎夜、一風変わった笑い話を語って聞かせる。

彼女はまどろみ始め、そこで「アヴェ・マリア」と唱えた。眠りにつく前に必ずこれを唱えることにしていたからだ。ただ、最後に唱えた「アヴェ・マリア」が昨晩のものだったのか、二分前のものだったのか、彼女にはわからなくなることがあった。それで、何度もお祈りを繰り返すのだが、というのも彼女は時間をごっちゃにしており、はっきりしないまま眠りたくはなかったからだ。

彼女は知り合いの大半よりも物持ちだった。養ってくれる息子たちのおかげだ。彼女は皆よりも立派な家具を持ち、より安全な建物に住み、そこここにかかりつけの医者がいた。彼女は婦人科医に通わされており、ジャネットから電話が来たと思ったら、今度はマリアンから電話が来る―世界中の女性、万歳!しかし、いまだに「私に勝る人がどこにいる?」とは言えなかった。

彼女の夫は家族のないイタリア人だった。壁から浮き上がった影のようにどこからともなく姿を現した青年。彼女は最初そんなことなど気にしなかった。そういうところが好きだった。白い菓子折りとともに姿を現す親戚縁者など欲しくもなかった。彼の無駄のなさ、付属物の欠如しているところが好きだった。しかし、そのうち彼女はその意味を悟るようになった。この男の浅黒い肉体に残された唯一のものとは、虚空に生きる青年、今にも自分の運を使い果たそうとしている危なっかしい青年だった。

ここで彼女は眠りに落ち、それから今度は車から流れる音楽で目が覚めた。再び息子たちの声、食器棚が閉まる音が聞こえた。

彼女は自分の愛情を見せたりしなかった。見せはしたが、充分には見せなかった。この手のことが下手だった。しかし、部分的には彼のせいでもあった。彼女が愛すれば愛するほど、彼はびくびくしだした。毎夜笑い話をしている最中も、目は怯えていた。

彼らが食器棚をあけたり閉めたりするのが聞こえた。何がどこにおいてあったか二人にはわからないだろう。今さらわかりっこない、あのアホどもめ。彼女は手の甲を引っ搔いた、猛烈に。そして最後にもう一度「アヴェ・マリア」を唱えた。最後の「アヴェ・マリア」が昨晩のものであってはいけないので。

そうやって育てられた。ミサに行け、両親に従え、勤勉な青年と結婚しろ。そんな人のことを「ハムエッグ」なんて呼んでいた。修道女たちは言ったものだ。あなたはマリア様の子供だから相手にキスしなくてもいいのです。しかし彼は普通ではなく、彼女は彼にキスをした。

ニックが正しいのかも、などと考えるだけでもつらかった。誰かがやってきて彼を連れ去ったなんて。もしそうだとすればジミーに罪はないことになる。まだ小さいときからニックはそう信じていた。しかし、たぶんもう一方の方がたちが悪いのだろう、真実の方がたちが悪い。そんな荒々しい出来事などなかったのだ。

眠ったかと思うとまた目が覚めた。彼女は耳をそばだて、ニックがすでに帰り、マットはベッドに就いているのがわかった。それから街路の物音に耳を澄まし、檻にいる動物や生息地にいる動物たちのことを思った。ボストン通り近くで夜中に咳き込むライオンたち。

 

『アンダーワールド 左手のための挽歌』