入れ替えられた棚

スーパーマーケットの棚が入れ替えられた。ある日何の知らせもなく。通路では人心が動揺しパニックにおちいり、年老いた買い物客たちの顔には狼狽が宿っている。彼らは寸断された恍惚状態のまま歩き、止まっては進み、きれいな身なりの一団は、通路で釘づけになり、どういうふうに入れ替えたのか、その考えのもととなるのは何かを知ろうとし、クリーム・オブ・ウィートはどこにあったのかを思い出そうとしている。彼らは入れ替える理由がわからず、そんなことをするのはばかげていると思っている。洗い流し用パッドは今では手洗い石鹸と一緒に置いてあり、調味料は分散されている。男も女も年がいっている人ほど、ますます良い身なりをし、身じまいをきれいにしている。男たちはサンサベルトのスラックスに派手な色のニットのシャツ。女たちはおしろいを塗り、凝った身なりで、自分を意識したようすで、どこか何かのために用意している。彼らは間違った通路に入っていき、棚にそってのぞき、時々突然立ち止まり、ほかのカートにぶつかっている。一般的な食料品だけがもとの場所にあり、白いパッケージに簡単なラベルが張ってある。男たちは買い物リストを調べ、女たちは調べない。今やみんながうろつきまわっているという感じで、目的もなく何かにとりつかれたようで、気のいい人たちは隅の方へ追いやられている。彼らはパッケージの上の小さな印刷まで調べ、ほかにもごまかしがないか心配している。男たちはスタンプの日付をさっと流し見て、女たちは原料を見ている。多くの人がその文字を読みとれずに苦労している。不鮮明な印刷、消えかけた図柄。どよめきがとりまく、入れ替えられた棚のあいだを、年をとったという明確で冷酷な事実をあらわにして、彼らは混乱のままに進んでいった。しかし最後に彼らが見るものや、あるいは見ていると思っているものが何だったのかは問題ではない。レジ台にはレーザー光線のスキャナーが備え付けられ、すべての品目の二進法の秘密のバーコードを、少しも誤りなく読みとる。これは波動と放射の言語、もしくは死者がいかに生者に話すかだ。そしてここはわたしたちが年齢に関係なく、カートを色鮮やかな商品でいっぱいにして、一緒に待っているところだ。ゆっくりと動いていく列。満足だ、ラックのタブロイド新聞を眺める時間がある。食べ物と愛情以外のわたしたちが必要とするものすべてが、ラックのタブロイド新聞のなかにある。超自然と地球外の物語。奇跡のビタミン、癌の治療法、肥満対策。有名人と死者のカルト。

 

『ホワイト・ノイズ 三章 ダイラーの宇宙』