姉の結果はゼロ

寂しかったわ 異邦人になったようで いつもどこかが空虚で

声が変わったね

無情を知ったからよ あなたの思惑通りでしょう?

意地が悪いな 調子も悪そうだ

バルザック像はアイデアね

批判も多い あの像でパリ中に笑われた バルザック像は家の庭に置くつもりだ

私といて 抱いて欲しいの

音楽家のドビュッシーは君を抱いたのか?

よして 私は音楽は嫌いよ 抱いてくれないの?

君の作品を見ているんだ

私に越されるのが怖いの?

きっと私の模倣だろう? 怒るな 君は不調とか だがこの仕事の量からすると…

見ないの?

まず触れたい 君の意志の強さは悪魔並みだ

本当にイヤな人 何だか役人みたいね

まさか いや まさか! バルザック像の話をしたのにまた面倒を起こす気か? これはまるで私じゃないか! 2人の女にバラバラにされて 卑劣な風刺だ!

なぜ?

私の求めるものを作れ

意志に反して? 私は私の道を進むわ!

だが私を笑いものにする気ならよしてくれ この私に勝ちたいか! 格が違うぞ!

格?

君など三流だ

私から盗んどいて!

すべて私の芸術だ 君の彫刻は強迫観念の塊だ

嫉妬はやめて

嫉妬? 私が? 私は死でなく生を彫刻する 君は生を非難する 苦悩を求め苦悩に酔い苦悩を作る 自分を犠牲者にして だが君が私を捨てたんだ

あなたとは生きられない!

これまで一緒にやってきたじゃないか 我々は対等の立場で生きるんだ

いい仕事をしてあげた クローデル嬢の仕事はロダンそっくりと! そう思わせるのが狙いだったのよ!

驚いたな! 君が私の敵になるとは

あなたは私の若さ 才能 すべてを奪った!

責めるのか?

あんたになんかに出会わなきゃよかった! それも思う壺ね!

君は完全に酔っ払っているんだ 大酒を飲むそうだな

お酒をやめればあなたのせいと言われるわ 酒飲みと思わせておけばいいのよ

プロの私が君を支持してる 君にも自負があるだろう?

何がプロ? 注文が多くてアトリエを3つ持ち仕事は人任せで社交に走り作品には最後に手を触れるだけ そんなやり方はご免だわ!

やめろ! デタラメな中傷だ

どこがデタラメなの? 仕事に政治屋が必要?

私はどの派でもないぞ

信念がないものね もし支持する党があるならバルザック像を展示してくれる党よね でも私は反対党を支持するわ

もういい! やめろ! 滑稽な 何たる事だ 君は女そのものだ この世で最も欲しい女性だった

彫刻家のあなたは私の腹を撫でながら何も気づかなかった

子供のためなら結婚したのに

何年もの間あなたは… 選ぶ事をせず決心を拒んだ

君しか愛してない

あなたを分けあう事はできない

私には言う事は何もない 終わりだ 傷つけあう事にはこれ以上耐えられない 荒れ狂う感情の嵐はもうたくさんだ

あなたはいつだって! なぜなの?

 

何もなくなる

ええ

一体なぜ?

お金が要るの

気は確か!

入りませんよ

家主が何と言う?

家主が何よ ただの木じゃない ありがとう

さようなら

あなたなんか問題じゃない あなたの作るものは彫刻じゃないわ ロダン 私は骨に年月を刻んだだけの老婆 若さを再生する娘の私 男 それも私 あなたではない 彼にすべてを捧げもらったのは虚無 しかも3倍になって 虚無の聖なる三位一体

この石になぜ人が入ってると分かるの? お腹が痛いの? パパは医者だよ

誰かが食事に毒を入れたんです 毒が体を回って背中が寒いんです 私は毛虫に食われたキャベツです 葉を伸ばす後から食べられる

お話によれば孤独感が健忘症の原因のようだ 大きな声で話して下さい

叫んでもムダです こっそり行動を 特に名は隠して 奴らはどこでも来る 私を威しに

奴ら?

彼よ あの人よ

 

なぜ私にウソを? 作品を万国博に出すと言ってくれたわ

だが1900年の万国博はムリでした 私はあなたの記事を最初に書き擁護した

欲しいのは名声よ!

評価は高い 「分別盛り」もだ だが万国博には向かない

ロダンね 彼の陰謀ね

彼は常にあなたを支持し高く評価し最高の栄誉をと望んでいる

ロダン一味に騙されないわ 大臣より力があると自慢し私の肖像を絵ハガキにして侮辱してるわ 私のロダン像を許しもなく至る所に出し自己宣伝して 淫らな素描も

誤解だ 彼は敵じゃない 冷静に あなたの手紙と請願にずっと悩まされてきた あなたは何だ?

私が誰か本当に知らないの?

呆れたな どうかしている

私はカミーユ・クローデルよ!

 

ミショー先生!

何をする 放せ! 私は医者だ 何事だ?

令状です 国有財産の回収を

ロダンの陰謀よ

国は代金を払った モラール氏が手形を

焼き捨てたわ 作り直すのよ 邪魔させないわ 誰にも邪魔させない!

 

ロダン! ロダン! 資本主義者!

またカミーユよ

この搾取者! 今すぐ出てこい! 聞いてるの! ゴミをまき散らすわよ! さあ! ロダン!

引っ越しましょう

 

カミーユ

パパ

信じられん 目の青が黒ずんでいる ひどい顔だ 母さんはお前が行方不明だと ポールも発つ前に会いたいと捜していた

彼はパリに? 米国?

中国だ 彼は副領事でよく旅行している

美しいわ 彼と中国へ行きたかった

彼は評判だ 偉大な詩人だと 長らく彼を顧みなかった

そうね 私が面倒かけすぎて 失望した?

ああ だが愛しているよ “私は泣くまいと思った 顔を上げて歩こうと 人は前にしか進めず止まらねばならぬ 瞳からほとばしる水 皆の胸の中で同じ高さで盛り上がる海の水 私は何を間違えたのだろうか? 手足を切ってくれ それをあなたに差し出そう 骨の上をあなたの方へ歩いていこう”

恥ずかしい 恥ずかしいわ

ポールは神を見つけ調和を見いだした お前は何を見つける? “私の体は石か? 木の葉は亜麻布か薄いブリキのよう 空気は見えない舞台の書き割り 昔最初の光線は私に触れ私の心をかき鳴らした 鐘に石を投げたように 今はあたかも精肉店の戸口に揺れる牛の肺のよう なぜ生きる? どうでもいい 生きようが死のうが ああ 苦しい 今日この日 私は何者かを明らかにせねばならぬ 独りで 皆に向かい 下劣な輩の鼻面を拳の一撃で潰そう 卑怯者の前で演説をぶとう 死すか自分の王国を築くか ああ!”

 

クローデル嬢 ブロの使いです

ロダンのでしょ? 彼の恋人ね 一緒にいたわ

いいえ 誤解だわ 私はクラデル 彼の伝記を書いています

クローデルにクラデルねえ

ぜひあなたのインタビューを

猫にどうぞ ねえグリグリ

ロダン先生は“あなたの見つけた黄金はあなたの物だ”と

彼がね

モラール氏はあなたが並ぶもののない作家と ご感想は?

富豪が無防備な芸術家を攻撃? 彼らは女の搾取者だと書いて

ロダン氏とモラール氏に恨みを? 不都合な記事は書かないわ

彼は散々空約束をしたわ 私にはゼロ足すゼロはゼロよ 彼にとって私は死んだ女でもお金は要るわ

彫刻に…

その2つのオニキス像を見て 私が磨くの 触らせないわ 絶対に

あなたの力になるわ この記事が役に立つわ

モデルが鋳型や大理石や薪代をくれるの?

私の作品で他人ばかりもうける お金をくれないなら帰って 最初に来た人に無心するつもりだったの ロダンの使いじゃなかった事を祈るわ 本当に違うならあなたに謝るわ でもここはもう永久に閉めるのよ さようなら ロダンによろしく

 

クローデル嬢 クローデル嬢 酒を? 起きて 何という変わり様だ セーヌが氾濫した サン・ルイ島が水浸しだ

彼が溺死させろと?

とんでもない 彼はあなたに注文を あなたは彼とプラハに招待された 行きなさい あなたの行動は無責任だ 聞いてる? 無責任だ 美術省に猫のフンを送りつけたりモナリザを盗んだとロダンを非難したり滑稽だ バカげた騒ぎはやめしっかりなさい 自分を葬り去ろうとせず発奮なさい

怖いの 作品を盗まれるのが 怖いわ 怖いのよ

恐怖は誰にもある

ええ でも… でも私は…いつも怖い 彼らには…私が…邪魔なのよ 私が邪魔なのよ 彼らは私の…才能を許さない

聞きたまえ しばらく会わない間にまた新しい宝が これだ この小さな作品 記念碑的だ

「お喋りをする女たち」

それが題名?

または「内緒話」

「シャクンタラー」だね 大理石版のこの少女像も 半年の期間で大型の彫刻を造ってほしい あなたの大きな個展をうちの画廊でやりたい 名声が確立する まるでロバの皮だ 私は好きだが 猫から救出しよう そこにいて 小船まで抱いていく

 

“鑑賞できずとも子供は両手を振り回す 柔らかい土を手にした母性的な喜び 十指で丸みを帯びた形を所有する技術 美しい生きた機械を創り出す技術 最初の人形に満足した子供に欲望が生まれる 彼女は心の彫刻の最初の職人である 思慮の浅い批評家は彼女の作品をよく名前は伏すが1人の芸術家と比べる 実際はこれほど完全で明白な対立はない 彼の作品は最も重苦しく物質的である 作品の幾つかは粘土の塊に絡みつかれ浮かび上がる事もできない 官能の狂乱の中で泥まみれで立ちあがる時も互いに絡み元の塊に戻ろうとしているようだ 隙間のない群像は至る所で光を押し返す”

ブラボー ポール!

恐ろしい

ブロさん ありがとう 成功よ

エキセントリックは彼女の特質だ あなたのためにあの服を

カーニバルの行列も顔負けの悪趣味だ 姉の彫刻はロダンの商業企画品とは違う

彼女は彼との別離を恨みに

彼にすべてを賭けすべてを失った 姉は… 姉は光輝く神秘だ

だが神秘を解する方法はある

もう行こう

彼女に挨拶は?

 

批評は上々だ ただ「ペルセウス」には憂うつの色が濃いと 切れた頭はあなた自身と言う者も

批評なんて…

どうでもいい 現代最高の女流彫刻家なんだ 批評家など相手にせずとも注文はどんどんくる 作品は愛好家の心を動かし私の魂も震わせた 笑う者は嫉妬からだ 天才は常に恐れられる

きれいな服と帽子を買うわ 妙な格好はやめて

違う あなたの芸術は超越している

感謝しています 大理石は送り返して いえ 石膏を 大理石とブロンズは贈呈するわ

 

ロベール 彼女を呼んで

ロベールです 僕だよ

開けろ! 早く!

子供を使うなんて卑怯よ 皆寝てるわ 私は彫刻家よ 夜はアイデアがわくの

 

あの人の苦しみといったら娘とロダンの関係を知って 妾のような暮らしをするなんて口に出すのもはばかれる あの娘は家族を欺いた 放っておけません! 早く手を打たねば

 

“クローデル嬢は精神を病み体も洗わずみすぼらしいなりで家具も売り払った 家賃は家族が直接家主に支払った 月200フランは快適な生活に十分である だが彼女は家に閉じこもり鎧戸は何か月も閉めきったまま”

“姉の結果はゼロ 私はある結果に到達した 才能は姉を不幸にしただけだった 姉は消耗しきり破滅した”

“危険なため精神病院に収容を”

 

“愛するポール 5月末に来てくれたきり面倒を見ると言っておいて見捨てるの? 精神病院は苦しむための所です 何もできず誰にも会えません 彫刻を作れと言われできないと無理難題ばかり あなたの姉は精神病者と牢獄にいるのです 母は病院長に手紙で私があなた方に悪意をもち復讐を企んでいると ウソです 私はビルヌーブで暮らしたい 便りも希望もなくこんな所で何年も暮らすのが楽しいと? あまりに残酷です なぜこんな仕打ちを? 知りたいわ もうシベリアへ送られても驚かない ビルヌーブに送ってくれた荷物に気をつけて ロダンの手に渡らないように 彼は私が戻るのを恐れ私の退院をできるだけ遅らせる気です 自分の家で扉を堅く閉ざしていたい この夢が叶うのかどうか 家に帰りたい 神様 どうか私をビルヌーブへ 追放された姉より”

 

『カミーユ・クローデル』