太陽に接近する宇宙船の話

辞めたらしいな

俺が? 君こそどうした

“物語”が終わらず何もできない

終わらせる前に二度考え直せ

それで復縁したのか? 家庭は私生活への干渉なんだろ 撮りたい映画の事も自分の事も考えられん

どんな映画だ

物語はまだない だから話さなかった ただ主人公は女だ

物語がないのに主人公はいるのか?

感覚さ 女性という形の感覚というか

また恋物語か?

どうかな

今の世に恋物語が何の意味を持つか この堕落した世界 腐敗した世界に

腐敗がこの国を1つにしてる 腐敗した連中が恋物語を見るんだ 顔を探してる 心に浮かぶのは彼女ばかり

彼女じゃダメか?

マーヴィか? 彼女の相手は僕だ 映画じゃない

同じ事だろ?

違う 登場人物には場所や事件が必要だ

なぜ見つけない? スランプだな

スランプだなんて いいか 君とは昔からいろいろな理論や問題を繰り返し議論してきた その間に世界は移り変わり議論は古ぼけ世界は不可解になる一方だ グライダーで飛んだ事は?

ない

僕もない 飛ぶ時の感動を女と味わいたい それがいつも話してばかり

沈黙は重いぞ

黙ったまま女といたい つまり大自然のように女と関わりたい 正気の人間なら海や森に1人で対した時黙っているはずだ それでも対話は生まれる 話したり答えたり 相手がいるように その相手になり切れるのが理想の女だ

理想の女か 待ってるのか?

ああ 待ってる

 

“地球の未来を脅かす太陽の膨張”

肌がこんなにカサカサ 花の盛りのはずなのに

惚れられないと老ける 今は僕がいる 心配ないさ

私に惚れてるの?

 

湿ってる

燃えないわ

また否定的だな 自然を信じろよ バクーには今でも火の神の聖堂がある その火は大地の奥底から噴き出してる じつは石油なんだ あの地域は石油が豊富でね 好きだよ

“愛してる”とは言えない?

一度も言った事がないんだ 恥ずかしくて

“愛してる”と言って “愛する”の意味も 愛してないのね 私を求めるのも愛じゃない 生きるためでしょ 生き残るため

生き残る事こそ現代人の悩みだ

着ないわ

なぜだ?

寒くていいの 私に服を着せ肺炎やカゼから守るように見せたいのね でもカゼを引けば私のせい

君はカゼなど引かない サメみたいに病気知らずだ 車のナンバープレートでもウイルスだって何でも消化する

ここを出たい

近くにホテルはない

地下にいる動物が…

窓も閉めた 恐がるな

あなたが恐い

僕が? 僕がいて安心かと思った

人生を壊されそう

僕との生活が君の人生だろ

あなたとの生活は一時的なもの あなたの友達やあなた自身について私は何も知らないわ 私の暮らし方は好き?

すごく冷静だな

 

ニコロ 来てよ

どうした?

あの巣は?

巣じゃない

何なの?

さあね

鳥は巣にいない時どこに?

飛んでる

SF映画を作ってよ

いいアイデアだ

 

あの写真は?

女たち…

映画の?

顔を探してる

どんな?

さあね 美人だろ

彼も素敵ね 目が輝いてる

その2人はテロリストだ 彼らのような生き方は勇ましく頼もしいが卑劣でもある 暴力的な関係しか生まれない 彼女は思想の違いから夫と別れた 子供を夫に押しつけ彼のもとへ 新聞紙上で夫と再会だ

夫も刑務所に?

そうさ

小説みたい

2人は何でも一緒だ 極端な思想も地下活動も だから仲がよかった 普通の関係になったら怪しくなった

 

いい知らせ?

ええ あのね… 子供ができたわ 検査していて結果が分かったの

イーダ どうしたんだ 嬉しそうだったのに 避妊してたんだろ?

ええ でも… 私達が会ったのは? その前に妊娠してたの

探してた解決策を見つけた

監督みたいね

監督だ

イタリアの映画監督は世の中に腹を立てて稼いでる

嘲笑する事もある

いつでも逆らってるわ 私は身にふりかかる全ての事を受け入れる 会えなくなるとつらいわ 子供を産むには代償が必要なのね あなたは私の恋

もう一度

あなたは私の恋 私の祝日 私のお正月 私のコカイン 私の色々なもの でも私の宿命ではない 私の宿命はある若者 覚えてる? 2人のテロリストの写真 “2人は何でも一緒だ 極端な思想も地下活動も だから仲がよかった” 私の彼に会えばよく分かると思うけど私達も仲がいいの 自分の子じゃなくても父親になれる?

 

太陽に接近する宇宙船の話だ 太陽に大接近する

燃えない?

SF映画の中では本当とウソの区別がない 宇宙を漂う小惑星を宇宙船に変えたんだ 特殊な鉱物でできていて100万度の高熱に耐える

なぜ太陽に近づくの?

研究のためだ やがて人類が太陽内部の組成を知り活動を知り宇宙誕生の謎を理解する日がくる

それから?

 

『ある女の存在証明』