動物園

ここがわかるね

声はどこから? 後ろから? 怖いのはなぜ?

知ってるはず

ニューヨークね 生まれたのはエバンストン シカゴの近くよ

昨夜は眠れたかい 今日の気分は?

とてもいいわ 彼は誰? なぜ質問を? 私を試してるみたい

この声を?

耳は正常よ 聞こえるわ 普通でいられなくなる こんな質問をされると 誰の声なの なぜ訊ねるのかしら 私はいぶかっている 彼は私を弄ぶような人ではない だとしたら古い手だわ まさか 彼に代わって訊ねてるのかしら 失礼 顔色が悪いわ 仕事を探してるの?

そんな バージニア

私の名前を? バッグを見たのね どこかしら 食料品店に寄って来たの どうやって帰れば?

何の話? 帰るだなんて どこへ? 通りの名前は?

太陽の光が 暑いくらい

どうしたの バージニア よかったら教えて 私は近く帰るかも 自分の家に 次の食事はそこで

よかったら…

みなさん

何?

面倒を起こさないで

火事か暴動でも?

さあ 整列して 整列って言ったのよ

なぜ整列を?

私語は慎んで

なぜ言われるままに

みなさん行きましょう

動物園だわ 集ってる 動物の匂いが嫌いなの オリに入れられ可哀想だけど

私語は規則違反よ

太陽の光を?

ええ ニューヨークの人々は親切 思い込みかも 初めて会うのに名前を呼ばれた “どうも”とでも言うべき?

続いて ルース ミナ どこへ? ジーン みんな入ったわ 3-A棟 急いで

私語は禁止 メリー さあ立ち上がって

3-A棟 早く歩いて

どこへ?

列を崩さないで

なぜ並ぶの? 兵隊でもないのに

ルシールも

わかりました

黙ってられないわ まるで軍隊よ 下書きをしなくては 言葉がまとまらないわ

走らないで 押さないの やめて 押すのは

ドアを開けて

静かにして

犯罪者のように

犯罪者?

ここで交代 行くわよ

犯罪者?

さあ バージニア

刑務所?

そうよ 知らないの?

ここを出たい 行くわ 放っといて こんな所には一刻もいたくない

何が?

別に バージニアがめまいを 太陽を浴びすぎただけです

 

“第12病棟”

そこにいないで 私に場所だから

知らなかったわ

何度も言ったのに 忘れた?

バージニアが敷物の上に

どきなさい 早く あっちに行って 敷物に乗らないように言ってあるでしょう 理屈は言わないの 敷物があるのはここだけ 新品だから汚したくないの

壁に掛ければ?

他の病棟のことも考えなさい 12号は特別なのよ

ここは12号?

1号とでも?

私はいつから? ずっと前よ その大足で2度と敷物に乗らないで

私は大足…

群れないの エマ エマ 乗らないの すぐに降りて

歌わせといて 上手だわ

エマ…来なさい

 

“第8病棟”

バージニアがまたここに

失礼 間違えてしまって

あっちよ

どうも バージニア

何事にも天国と地獄が

そうは思わない 陰で笑うでしょうが

彼女は裏表のない人よ だから私も気持よく挨拶を

静かに食べて

充分食べたわ バージニアはまだよ

優しいのね

バージニアにも バージニアの分も 残してあげて ごめんなさい

いいの お腹はすいてないから

よく食べていい子ね キック先生も喜ぶわ

 

素敵 他の病棟とは大違いね

ピアニストなの

私は作家

ピアニストだったら

失礼 バージニアよ 何してるの

人形よ 可愛いでしょう

とても

いつもこれを

見せて

タバコを

いいわ

5本と交換しましょう

あせらないで 点けるから ドロシー 待って

もう10本ちょうだい

全部あげるわ

こんにちは 見かけないお顔だけど

5号棟から来ました

2号棟を飛び越えて5号棟から直接は初めてよ 私はお金持なの

いいわね

主人が裕福なので身に飾れないほどの宝石が あなたは生活保護を?

いいえ 私の主人もおカネはあるから 体が重くなるほどダイヤを

私のダイヤには“希望”の銘が

私は“絶望”という呪われたエメラルドを 有名な宝石よ

グリア―が…

ご主人?

主人はそれを買わなかった キズがあるので 世界一美しい手には完全な宝石でなくては だからここでも卑しい作業はしない

治療のためにもやるべきよ

私には向かないもの

あなたに限らず誰にも必要なことよ

例えば誰?

パーシングとか

私の従兄弟だわ 一族の中でさえないひとり

 

17人の女に囲まれたので撃たないでって言ったのに耳を貸さないで体を粉々にされたまま…

ゲアトルードさん 立って

あきれた

何?

ただの独り言

いけないわ 重症よ どこから?

1号棟? 1年以上前からね

もっと短いわ

そう思ってるだけ

名前は?

カニンハム

私はソマービル 書いとくわ 今日の検温はまだね 大切なことよ 平熱だわ ありがとう

ソマービル? 1号棟の婦長では?

今は違うのは確かよ 重症なの

離して 2度としないから

へスターに近寄るからよ

気をつけて 彼女は変だから 話をしないし自分が誰かもわかってない どこへ行くの

こんにちは 気持はわかるわ 私も同じだった お友達になって いいかしら

私は大統領夫人だから顔を隠してるの やめなさいって止められる人はいない 大統領夫人に向かって

へスターが口を利かないの 私を知らないからよ あなたもね 良家の出身なのよ わからないでしょうが そうなのね 知らないなんてひどい!

代理人として話してるのよ 8月20日退院できるならモリーは1万ドル払う でも治ったという報告書が要るの 私は協力するから何でも訊ねてちょうだい

 

不思議だった 彼女たちと一緒にいるのにそれを遠くから見つめてる自分がいた すべては深い穴の底にあり彼女たちは奇妙な生き物 まるで… 蛇のようだった 私も投げ込まれたのだ そうだわ 蛇の穴のような所に

 

『蛇の穴』