ふしだらなベッド

2人が選んだ衣装は“今すぐヤって服” 勝ちを争うゲーム 列車で小旅行をする Bが“切符は要らない”と 目的地に着くまでに1人でも多くヤったほうがチョコ菓子を勝ち取る 驚くほど簡単だった スコアは5対3 Bがリード 彼女の言うとおり 目を見て微笑むだけ でも突然止まったの
川釣りとまったく同じだよ まったく食いつかないか一気に食いつくか 食いつく時は狂ったような勢いだ だが突然それが止まる 雨の降り始めは食いつきがいいんだ 安全だと感じるからだろう 雨で川面が乱され敵に見つからないからだ
また食いつき始めた ペースは遅くなったけど
だろうとも よく分かるよ フライ・フィッシングには段階がある 食いつかなくなったら第2段階へ “昆虫に似た餌”だけでなく“ケガした餌”を装うこと ラインを引っ張るんだ わざと不規則に “すぐ捕まる餌だ”と思わせるためだよ 力なく流されるままにする 弱々しく跳んでみせたりね 優雅にやらなくてはダメだ
大丈夫かい?
ベティが… 重い病気だと聞いたの
身内の誰かなのか?
ええ そうよ 私のハムスター
ハムスター? 冗談だろ?
じゃ 何て言えば? 昔本当にハムスターを飼ってたの
大切な存在だった?
ちっとも 邪魔だったわ
ハムスターか 人間でなくて何より
そんなこと言わないで とてもかわいがってるの
そうとも 皮肉な言い方はよくない
ベティのために居心地のいいケージを用意したのよ
気に入った?
大喜びだった 存在意味のない生き物だわ
“ハムスター”と言ったのは性的な含みがあったのか?
今はそう思えるけどあの時は無意識だった
どうせ私の負け “10対6”
あなたに5ポイントあげる 彼をモノにしたら
私は本気で決意した あのチョコ菓子を勝ち取るにはこの男を積極的に挑発しなくては
すばらしい “誘因釣法”だ うまくいかない時挑発するとおとなしい魚も食いつく 刺激に対し本能的に反応するんだ その場合フライよりもウォブラーがいい 色は赤 フィンランド製の必殺武器“ラパラ”が最強だろう
プレゼント?
そうだ 妻のため
一等車に乗り私たちの切符も買ってくれた なぜ奥さんにはそんな安物を? 駅で買ったのよね
もちろんもっといい物を買うべきだが… 予定が変わり急に帰ることに
あなたは几帳面そうなのになぜ急に予定が変わるの?
家族の問題だ 妻と決めたんだよ やはり子供を持とうと それには今が最適だ 昨日妻から電話があり… 排卵日だという 妊娠するには今夜が一番のチャンスだ だから駅でプレゼントを買った 一刻も早く帰るために
それで分かったわ
何が分かった?
私たちとしなかったこと
したくなかったんじゃない よせ 頼む やめてくれ
大丈夫よ
やめてくれ
こんなにヤりたそうよ 出さなくちゃ
よせ
つまりオーラル・セックスは君にとっての“フィンランド製必殺武器”だな
感想はそれだけ?
じゃ どう言ってほしい?
“君の行動は間違っている どう見ても君はものすごく悪い人間だ”と
私はそう思わない それどころかむしろ楽しくて滑稽な話だよ 承知で他人を利用し傷つけたのよ 私の欲望を満たすために 今までの話で分かるはず
楽しそうに話してたぞ ユーモアたっぷりに 君がしたことは何人かの男と思い出を作ったのと… “S”をイカせたことだ 若さの驕りはあったが… それに長く溜めていると精子が死ぬそうだ 質が悪くなる場合も 君のおかげでS夫妻は健康な子を授かったかも
女としての自分の力に気づき利用した 他人を顧みずに 許しがたいことよ
ダーリン…
親しげに言わないで
すまん 私が言いたいのは… 翼があるなら飛べばいい

列車のたびで欲望を刺激されBと“会”を発足させた 名称は“小さな群れ”
“私のアソコ 最高のアソコ”
リーダーはB 誰よりも大胆だから 彼女はカトリック育ち カトリック教会の教えは知ってるわよね
実に興味深い 冒涜的で邪悪だ その音… BとFの和音 三全音 “悪魔の音程”だ 中世では禁じられていた
“掃除機”が考えたの ピアノを習ってたから
掃除機?
ヤワなペニスを吸い込む特殊な才能があるのよ 掃除機のようなアソコ
そうだろうと思った
ファックと好色でいる権利の会よ 一緒にオナニーしたりとかね 反抗的だった 恋人は持たない 同じ男と2度はヤらない
何に反抗してた?
愛よ
愛?
愛に取りつかれた世の中と闘っていたの 私は“会”を信じてた とんだバカだったわ 時と共に最も強い者でさえ信条を裏切るのよ
実をいうと今週アレックスと3回ヤった
3回? 男とは1回だけのはずよ
あなたにはアレックスが理解できないのよ
理解したくない
彼との関係は…
関係? あきれたわ
セックスのことをすべて分かってるつもり? セックスに必要な秘密の要素は愛よ
私にとって愛とは嫉妬の要素を加えた欲望 それ以外意味はない 愛の名の下に100件の犯罪が起きるならセックスの名の下には1件よ
それは名言だ
まともな教育を受けたいと心から願ったわ
どんな教育を受けた?
父のように医学の勉強を始めたわ でも集中できなくなって勉強する意欲をなくし結局やめてしまった だから職探しを始めたの まともではない給料でも仕事は見つからない 私は何もできなかった だから高望みせずに印刷会社のアシスタントに応募した 誰も仕事を命じてくれないのでとりあえずオフィスを片づけることにした
おはようございます
電話は?
ありません
何をした?
片づけたの
片づけた?
散らかってて…
リズ 片づけたと
すみません 気づかずに…
気が変なのか? なぜ紅茶と菓子が?
好きだと思って
思った? 頭は使わなくていい ムカつく やり直しだ
やり直し?
持って出ろ もう一度やり直せ 待て 入れ
紅茶とお菓子はいかが?
もらおう フォークがない
フォーク? 持ってきてもいいですけど必要ないのでは
どうしたらいいかしら ここが汚くなってるの あなたの指が汚れてるのよ 手を洗わないと
そうだな
あなた 才能あるわ
まあね
ジェロームにとっては私からの宣戦布告よ 何度も彼と街へ 私の役目はコートを持つだけ
そこよ
どこ?
緑色の車の後ろ
狭いよ
十分広いわ
ムリだ 狭すぎる
停められるわよ
ダメだ
やらせて
君に?
得意なの
僕がやったのを見たろ? スペースが足りない
やらせて
いいとも やれよ
その頃私の中で劇的な変化が訪れていた 乱雑さの中に不思議な秩序を見いだしたの すごくいけないことよ ジェロームの“物”になりたかった 彼の手に取られ戻されたい 何度も何度も 彼の手で扱われたい 私には理解しがたい彼の法則に従って
彼の力強い手で?
そう… でも彼の手だけじゃない 彼のすべてが違うように思えた もちろん彼は今までと同じよ 違って見えた自分を叱ったわ
“愛は盲目”か
もっとひどい 愛は物事をゆがめる もっと悪い 愛は求めてもいないものよ エロスは男に強く求めていたけど あんな愚かしい愛は… 屈辱的に感じたわ 愛は不誠実なものだから エロスは“イエス”と言うこと でも愛は嘘をまとい最も低俗な本能に訴える イエスなのにノーと言ったりその逆も そんな自分を恥じた だけど制御不能だった
彼は遠くへ?
そう 去ったのだ 世界中を旅するそうだ 結婚もした
結婚?
そうとも 私の秘書と飛び立った リズだ
君の仕事は?
彼の伯父さんはもっと能力のある人材を求めてた
つまり愛の終わりか
そんなに簡単じゃないわ “その後いろいろあった” 小説で言うように…
ジェロームは突然消えたのか?
そうよ
彼のことを私なりに心にとどめておきたくて電車の中でオナニーしたわ
電車でオナニー? 座席で?
もちろん ジグソーパズルよ
ジグソーパズル?
いろんな乗客のディテールでジェロームを思い出すの でもやがて努力しても彼の細部を思い出せなくなった
ジェロームの後は?
反動でとても攻撃的な行動に出たわ
どんなふうに?
より激しく男を漁った スーパーのドアはセンサーで開いたり閉じたりする 私の性器もこのドアと同じ ずば抜けて感度の高いセンサー付き 私の敏感なドアは形態学研究の機会を与えてくれた 葉っぱから性器まで 私は新たな旅に出た おとぎ話的に言うなら“黒くて大きなペニスの国をめざして” “黄色い小さなペニスの国へ” そして驚くべき数の割礼されたペニスの間を突き進んだ 歴史の中で切られた包皮を全部つなぐと火星まで往復できるほどよ

私の周りには大勢の男がいたので誰が誰だか分からないことも
やあ 会わないか?
フィッシャーだ 君が言ったことを考えてる 僕は怒ってないよ
ジョー またロブだ 会えて楽しかった 電話をくれよ
ジョー 伝言を残したけどどうかしたのかい?
男たちとの関係を思い出そうとするのはやめた 不可能だった 彼らが望む返事も予測できない そこで方法を考えた すべては運任せ “1”はすごく愛情を込めた返事 “2”は少し醒めてるけど前向き その調子で進み“5”は完全な拒絶 “6”は返事をしない エディ 私よ いろいろ考えたけどあなたとは終わり さよなら この方法だと相手との関係を気にする必要がない パトリック ジョーよ 私の返事が予測できないため男たちをいっそう刺激した あなたってイラつくの もう会いたくない 電話しないで 男が大勢いると当然ながら性格にもそれぞれ違いがある “H”は面倒な奴だった 帰って 夕食に来客が
7時まで来ない
まあね でもじき7時よ
俺を愛してるか?
“A”が7時に来る Hを追い出したかった 愛しすぎてるわ でもあなたの約束は口先だけ 私のために家族を捨ててはくれない 悲しいけれど… あなたのせいよ 愛する人を独占できないのはイヤ だからもう会えないわ さようなら
なあ…
幸せを祈るわ
ダーリン 俺は君のものだ 妻と別れた
中に入った? ドアは閉まった? ごめんなさい 上まで行かないって約束したのに あの人が無事ここへ来られるか心配で… 重大な決心をしたし 子供たちを彼に会わせても? ステキな部屋 とても自由奔放な感じ 忘れてた 車のキーを
いや 要らない
必要だわ 彼は車が好き ほら 受け取って
要らない 車なんか要らん!
いいのよ バスで帰る 公共交通に慣れなくちゃね あなたたちの生活水準も変わるのよ
これは?
プレゼントよ この子が自分で刺繍した枕なの 誰のため?
パパ
あなたの前で彼を“パパ”と呼んでいい? 迷惑なら違う呼び方にする “彼”とかいっそのこと“その人”って 本当は子供たちに会わせたくなかった でも気が変わったの 父親のせいでこの子たちの人生は破滅したんだから パパにあげなさい 車の刺繍をしたのよ 一見分かりにくいけど心を込めて見れば分かる あなたにはどうでもいいことね ふしだらなベッドを子供たちに見せても? これは子供たちにも大事な問題だから みんな見たいでしょ? パパが大好きな場所よ さあ 入って ここですべてが起きたのね この部屋を覚えておくのよ 特にベッドを セラピーの時役に立つから セラピーだなんて料金のことも考えずに せびってると思わないでね ごめんなさい 悪かったわ ママったらバカね 紅茶を飲みましょう 子供たちの父親は角砂糖2つ 私が行く いいの 座ってて ステキね きれい 子供たちいらっしゃい 面白くなるわ 息子よ 目を見て
アンディだ
ジョーのお友達? もう長いの?
そうでもないです
長くない? 3人の関係とはとても風変わりね とても寛大だこと その点では私はダメだった 間違いないわ 子供たち 今こそ頭をしっかりさせて聞きたいことはすべて聞くのよ なぜなら… 二度とこんな連中と会うことはないしこんな状況も起きないわ どうなの? 質問はないの? 何も? じゃあ私から 彼女はたった1日で何人の人生を破滅させられる? 5人? 50人? 数百人?
これは大きな誤解よ 坊やたち… 私はお父さんを愛してない
私たちのために言ってるだけよ もしこれが冗談なら… 本当に冗談だというならあまりにも残酷すぎる これほど残酷な人はいないわ 20年かけて織り上げた愛を引き裂くなんて冗談なんかじゃ済まない もういい “3人は邪魔”というけど7人いたら意欲わく? 彼女が孤独を楽しむ姿を想像してみたい この辺で私は消えることにする 事態が醜悪になる前に ダメよ 戻ってきなさい お父さんが罪悪感を持つでしょ
君の人生への影響は?
何もない
まったく?
ないわ オムレツを作るには卵を割らなきゃ
確かにな 人によっては依存症を非難するが同情する人もいる
私の場合原因は欲望よ 欠乏感じゃない
そうだろうな
欲望のせいで私の周りを破滅に導いたわ
まあな 依存症は時として共感を得られないものだ 獅子と戦いながら子供の鼻は拭けない
私にとって色情症は無感覚と同じ
頑なだな 君の気持ちは? どう感じていたんだ? 快感だったのか? それとも不快?
H夫人の孤独の話は正しいわ 孤独じゃなかったといえば嘘になる
それだけ男がいても寂しかったのか?
孤独を感じたわ 何もかもがとてもつまらなく思えた 7歳の時 手術を受けた 小さな手術だけど麻酔をした 麻酔前の投薬をされ落ち着いていた でも医者や看護師が準備するのを見た瞬間 通過できないゲートをたった一人でくぐるような気がした ママが恋しいのではない パパが恋しいのでもない 優しい人なのに まるで私は宇宙で一人ぼっちのよう 体全体に孤独と涙が満ちている感覚…

父が死んだ時 私は感情を失っていた
よく分かるよ
何が起きたか分からなかった とても恥ずかしかった
恥ずかしい? でもなぜ?
濡れてたから
君は自分を否定的に見たがる “他人より悪い人間だ”という先入観で でも今の話は普通だよ 重大局面での性的反応は珍しくない 君には恥だとしても文学作品にはもっと悪い例もある

普通 色情狂というのは“満足できない人”と思われる だから大勢とセックスすると 確かにそうだけど正直に言うなら私としてはただ単に“性的体験の総体”としてしか見ていない だから私にとっては男は1人だけと同じ

どうした?
何も感じないの 何も感じない 何も… 何も感じないのよ

『ニンフォマニアック Vol.1』