音楽

あなたは?
ウルバーニ
ウルバーニさん 明日出直してくれ
輝く未来が待ってる すぐ始めよう
何の話だ
マエストロ 昨夜話したろ 忘れたか? 君はナポレオンをしのぐ帝国の支配者になれる パリからウィーン ローマからロンドンまで 世紀のヴァイオリニストだと認められたいだろ?
私が演奏すればいつでもどこでも金を払う人間はいる
貴族たちのご機嫌取りで満足なのか? 食事をしてる間のただの見世物だ 昨夜は客の気を引こうと道化のまね事を
私の音楽は勝利する
客が耳を傾けなければ勝利できない 誰かが100年後に君の手書きの楽譜を発見し大天才だと気づいても遅い それでいいのか? 君は音楽の革命児だ その手が楽器をオーケストラに変える 君は想像を超えたハーモニーを発見した 新しい楽器を生み出したのと同じだ それが君の才能であり問題でもある あまりに斬新すぎて聴衆はどう反応すべきか分からない その結果無視したほうが無難だと思い込む だから彼らに伝える必要がある 君の音楽がいかに革命的でユニークで崇高か 聴衆を歓喜させろ 音を聴かせる前に圧倒するのだ 君はあり余る才能と技術を持ってるが物語が欠けている だが私がそばにいれば心配する事はない すべて引き受けよう 君に仕える奴隷として 君は好きな事だけやっていればいい 自分の音楽を奏でて脚光を浴びろ
なぜ私のためにそこまで? 交換条件は何だ
君の力になりたいだけだ 今すぐに 返事ひとつで手足となって働こう もしあの世で会えたら その時は恩を返してくれ
あの世? バカげてる 先のことは興味がない 今があるだけだ この世界をブチ壊したい 死後の世界など
その心意気だ 先はどうでもいい
約束しよう ミラノの名門劇場で1か月以内に公演をやる
私の義務は?
ない
いいだろう
よく考えろ 一生の約束だぞ
言っておくが私の野望は果てしないぞ
望むところだ マエストロ 願ってもない そこでもう1つ 署名をしてもらおう

誰だ
君の意のままに動く忠実な使用人だ
私をスパイするのが仕事か
君の力になるのが私の望み はかない人生に喜びを届けたい これがそうだ
何だ ブラボー どこから盗んできた?
ロンドン公演の前金だ
何だと?
明日出発だ
断る 冗談じゃない
“ヨーロッパを征服する”と言ったろ? ヨーロッパの中心のロンドンを征服しろ イタリアの聴衆を魅了しても永遠には続かない 世間の興味はすぐ変わる 人気があるうちに波に乗らないと忘れられるぞ
行かない 私の答えだ
無理だ 君には金がない
大金を稼いだ
浪費したろ
バカな
金はない 賭博でスッた
盗んだな
言っておくが君からは何1つ盗んでない さあ 不快な話はもうよそう 何も心配いらない
なぜいつもこうやって強制する? 相談せずに勝手に決める 私の人生だぞ!
いいとも
この金はもらっておく
どうぞ
10倍にしてやる
お好きに 楽器は置いてけ
イヤだね
芸術家は気まぐれな人種だ
金を出せ
マエストロ もう金がないので無理だ
あるだろ
使い果たした
役立たずめ 金の代わりにこれを
パガニーニさん この見事なヴァイオリンには特別な価値があります いや それ以上だ もしよければ弾いてくれませんか?
誰の指図も受けない いや 言いなりか やろう やれ! なぜ私は勝てない?
勝つ方法は1つ カジノを所有する事だ

“窓を閉ざした馬車を用意願います 彼は細かいホコリを嫌います”
どこに連れてく?
ロンドンだ
戻れ
いいから薬を飲め
パガニーニさん?
パガニーニだ
パガニーニさん! あなたの崇拝者ワトソンです ようこそイギリスへ 光栄です
ありがとう
よかった
馬車は1台?
そうです
荷物が多い
上に積めます
どこかで火事かね?
いえ ロンドンは霧で有名でして
よく生きていられるな 息もできん 彼は身体が丈夫じゃない
ハンカチを口に当てれば大丈夫
胸クソが悪い
冷気は肺にいい 窓を開けましょう
好色家に安全な港はない 出てけ 悪魔の崇拝者 悪人に安らぎはない 好色家に安全な港はない 出てけ 悪魔の崇拝者 悪人に安らぎはない
小さなデモは気にしないでホテルに入りましょう
この騒ぎはいったい何だ?
触らないで 私は「道徳向上女性同盟」のP・ブラックストーンよ デモに文句でも? 女性を代表して信念を主張してるだけよ
立ち去れ 警察を呼ぶぞ
呼べば? 怖くないわ ここで一晩中やります 彼が来るまでね
彼?
パガニーニよ ホテルをフロアごと予約したそうね とんでもない浪費だわ
消え失せろ
好色家に安全な港はない
マダム 抗議する理由を教えてもらえますか? 友人と私はここに泊まる予定だがうるさくて休息できない
仕方がないわ パガニーニは有名な女たらしで悪魔の崇拝者よ
まさか おぞましい! それで対策は?
デモで彼を追い出します 好色家に安全な港はない
悪魔の崇拝者め 音楽のようだ

そこは少し退屈に聞こえる
鈍才だな
才能のカケラもない
リズムを正確に刻むのが音楽の基本だ
彼のせいで演奏に集中できない
彼の楽器はガルネリだ
そうだな
もっと明るい感じに
ワトソンさん
何でしょうか?
話がある
遠慮なくどうぞ
彼の楽器だが 弾いてみたい
壊さないさ
ありがとう
困ります ヴァイオリンを返して下さい 返してくれ! 返せ
まあまあ

悪魔の音楽は若者に有害だ 魂を腐らせ 人生は破滅する
ありがとう
パガニーニさん 家から出てって
何と?
あなたとウルバーニさんはお引き取りを 明日の朝一番に お分かり?
メイドが決める事じゃない ワトソン氏は滞在しろと
あなたを売り込む彼の努力に感謝したらどう?
本人が言えばな
彼の娘を娼婦扱いしたと言いつけるわよ あなたの前金の要求でメイドを手放したわ 私はワトソンの娘よ 宝石で買収するつもり?
まさか
そうよ どうせあなたはお粗末なヴァイオリニスト 世間のうわさ通りね 貧相な音 陳腐な演奏 安っぽい音楽を聴かせる哀れな見世物師よ 練習しないのは下手なのがバレるからね
いいさ 今に見てろ
見せてよ 実力を
君に見せる義理はない 父なら別だが

あなた達に警告します 今に天罰が下り疫病が蔓延するでしょう その苦しみは快楽を追った報いです
とっとと消え失せろ 痛い目にあうぞ
あなたこそ後悔するわよ 私は人でなしに堕落させられました 根っからの性悪男に あなたも破滅するわ
また堕落させてやる
できる?
できるさ

残ってもらえるかな?
あら 私をクドくつもり?
いや 私の快楽のためじゃない
他のファンと同じようにニコロに夢中よ 彼は無視だけど
恋に落ちたと勘違いしてる
悲劇ね
彼の間違いを正したい
彼が愛してる女性は誰?
若い美女だ 背丈も髪の色もあなたと同じ
ウルバーニさん その企みは興味をそそるわね
彼女は処女だ マエストロ 彼女が来た
シャーロット シャーロット
愛しい人
パガニーニの演奏会 若い女性との禁断の恋 パガニーニが若い女性と禁断の恋だ 読まないと損だよ
今朝の新聞におぞましい記事が出てます 外国人のパガニーニが英国人の無垢な少女を誘惑 まだ子供ですよ 放っておくつもり? 風紀の乱れは若者を堕落させます 音楽は魂を腐らせ人生を台無しに アーメン 音楽は魂を腐らせ人生を台無しに
ミス・ワトソン マエストロはそっちです あなたが来たと知らせよう すぐ来ます
おはよう
どういう事だ お前の陰謀か? 二度と顔を見せるな シャーロット 待て!
お好きに
待って 待ってくれ! 聞いてくれ
聞く必要ないわ
ひどい誤解なんだ
なぜウルバーニと一緒なの? 冷酷で恐ろしい男よ 付きまとわないで
待ってくれ!
あの娘よ 女たらしを捕まえて! この恥知らずは娘を誘惑して一夜を過ごしたわ 娘は被害者よ 身も心もズタズタにされたのよ 英国人の怒りをあの男にぶつけて! 早く叩きのめして!
シャーロット! ウルバーニ! ウルバーニ 助けろ! シャーロット  聞いてくれ シャーロット 説明する お願いだ 聞いてくれ 誤解なんだ これは不当逮捕だ! なぜ牢にブチ込む? 身に覚えはない こっちは被害者だぞ!
新入りだ 子供をレイプした
何だと? とんでもないウソだ
事実だろ
ウソだ
痛めつけろ やれ!
一夜明ければみんな敵だ
ウルバーニ
私に背いた罪は許してやろう
どんな罰も受ける もう二度と背かない
彼女を愛してなかった あの娘の幻想を愛してただけだ 清らかな幻想を 無垢な娘がお前の数え切れない罪を消し去ってくれると だが彼女は生身の人間で肉欲もあれば野心もある あのまま続いてたら彼女は破滅しただろう お前の血に宿る悪徳の色に染まり彼女は堕落してたに違いない 私は悪魔じゃない 悪魔に仕える従者でお前が私の主人だ

君はこの計画にすべてを注ぎ込んだ 前に進むしかない
それが賭けに勝つ唯一の方法だと言ったな
今から演奏だ リサイタルが終わったらカードで遊べ カード・ゲームは好きだろ? 念願のカジノが手に入った 私がやったのは出資者探しだけだ
彼女は来ない お前がいるせいだ
私がいなくなってもどうせ彼女は来ない
リサイタルは成功する
そうとも
カジノも 彼女は来る パリで祝杯を挙げるぞ 手を切ろう 今回は… 今回は本気だ
私なしでは生きられん
違う 生きられないのはお前だ 行け
行くとも また会おう

司祭が来たよ
私は治る 死ぬもんか 出てけ! 出てけ! 治る
神の恩寵で治ることを祈るが永遠の生命は得られない
恩寵?
ざんげをして神と和解しなさい
神の恩寵だと? 神の恩寵… 神は私を見捨て代わりに恩寵を与えた 才能という恩寵を そして世界に放り出した 才能を理解しない世界に 出てけ 神を出し抜いてやる 見てろ 必ず… 永遠に生きてみせる

教会はパガニーニの遺体を教会墓地に埋葬することを拒絶した アキレウスが撤回を求めてローマ教皇に直訴したがその願いは聞き入れられなかった

『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』